西城秀樹の貴重な映像の数々が収録された7枚組のDVD BOX「THE 50 HIDEKI SAIJO song of memories」がリリースされた。TBSの番組における膨大な歌唱シーンを収め、現在も人々の記憶に焼きつく、鮮烈なパフォーマンスを観ることができる本作。“YOUNG MAN (Y.M.C.A.)”で番組史上唯一の最高得点〈9999点〉を叩き出した「ザ・ベストテン」をはじめ、「8時だョ!全員集合」「セブンスターショー」「サウンド・イン“S”」「日本レコード大賞」など、西城秀樹がTBSに残した足跡をたどることができる映像集だ。今回は、このDVD BOXの見どころ、そして永遠のスター・ヒデキの魅力について、ロック漫筆家の安田謙一に綴ってもらった。 *Mikiki編集部

西城秀樹 『THE 50 HIDEKI SAIJO song of memories』 CS/Sony Music Direct(2022)

 

デビュー50周年に発売される、膨大な歌唱シーンを選りすぐったDVD BOX

72年3月25日、“恋する季節”で西城秀樹がデビューしてからちょうど50年を迎
える日に、その魅力を凝縮した映像作品が発売される。

「THE 50 HIDEKI SAIJO song of memories」と題されたボックスセットには、西城秀樹がTBSテレビの〈歌番組〉に出演した際の膨大な歌唱シーンから選りすぐられた計153回に及ぶパフォーマンスが7時間を超えるボリュームで7枚のDVDに収録されている。

 

私のロック衝動に火をつけた「8時だョ!全員集合」での全身全霊のパフォーマンス

Disc 1とDisc 2は「8時だョ!全員集合」から。69年から85年までお茶の間の人気を攫ったザ・ドリフターズのバラエティー番組。ここには73年の“青春を賭けよう”から、85年の“抱きしめてジルバ -Careless Whisper-”までのシングル曲が収録されている。評者にとって“情熱の嵐”(73年)、“薔薇の鎖”(74年)、“激しい恋”(74年)あたりの70年代前半の曲群への思い入れは半端ではない。歌謡曲という枠組を逸脱した全身全霊の歌と踊りはまっすぐに私のロック衝動に火をつけた。半世紀経った今、見返してみても、その言葉を修正する気にはならない。今回、ボックスセットを通して観ることで、この全身全霊のパフォーマンスがキャリアを通して繰り広げ続けられたことを思い知ることとなった。

“恋の暴走”(75年)あたりから藤丸バンドが伴奏を担当する。バンドアンサンブルならではの機転によって、“ギャランドゥ”(83年)の編曲が週を改めてアップデイトされているのも発見出来た。コスチュームの変化も楽しい。“ジャガー”(76年)はある種、極点に達している。とにかく、これだけ〈画が持つ〉歌手もそうはいないだろう。

「THE 50 HIDEKI SAIJO song of memories」ダイジェスト動画

 

「ザ・ベストテン」は〈よくぞご無事で〉と声をかけたくなるスリリングな場面の連続

Disc 3とDisc 4は「ザ・ベストテン」出演時のもの。番組オリジナル集計による邦楽ランキングのベスト10を生放送で発表。歌番組の一時代を築いた、これまた怪物番組。この伝説の番組の中の伝説ともいえる、最高得点=9999点を獲得した、79年4月5日と12日の“YOUNG MAN (Y.M.C.A.) ”のパフォーマンスももちろん収録されている。

「THE 50 HIDEKI SAIJO song of memories」ダイジェスト動画

大がかりなセットも売り物のひとつ。“炎”(78年)では背景に氷像が飾られ、間奏で秀樹がそれをパンチ&キックで破壊するという凄まじいシーンも登場する。“ブルースカイ ブルー”(78年)での巨大な布地を使った人力による振付けは、2020年の東京五輪の開会式はこれでもよかったのでは、と思わせる迫力がある。

先の「8時だョ!全員集合」ではお馴染みだった、ひとつのステージでコントが行われた後の舞台転換で歌うという、なかなかハードな状況に比べて、こちらでは歌に専念出来る、というのが普通の発想。しかし、群衆にまみれての“YOUNGMAN (Y.M.C.A.)”、動物にまみれての“ホップ・ステップ・ジャンプ”(79年)など、ハプニング必至のスリリングな場面の連続でもある。大阪球場のライブリハーサルでの“エンドレス・サマー”(80年)は、よくぞご無事で、と声をかけたくなる。もちろん、秀樹は動じることはない。

「THE 50 HIDEKI SAIJO song of memories」ダイジェスト動画