VA『SUMMER BREEZE -CITY POP- ULTIMATE JAPANESE GROOVE』シティ・ポップの入門盤でもありつつ、新たな視点も提供してくれるユニークなコンピ

VARIOUS ARTISTS 『SUMMER BREEZE -CITY POP- ULTIMATE JAPANESE GROOVE』 Sony Music Direct (2020)
2020.06.19

シティ・ポップが音楽シーンのトレンドになって久しい。もう10年近くブームになっている印象で、何度も〈終わる〉と噂されながら、その盛り上がりは拡大するばかり。インターネットを介した海外からの再発見、再発、若いアーティストたちによる再解釈……。音楽的なスタイルやジャンルのみならず、ひとつのイメージやムードを指す言葉としても定着し、〈シティ・ポップの時代〉はまだまだ続きそうだ。

ここに届けられたのは、そんなシティ・ポップをテーマとするタワーレコード特製の2枚組コンピレーション『SUMMER BREEZE -CITY POP- ULTIMATE JAPANESE GROOVE』だ。〈洋楽編〉と言っていい『SUMMER BREEZE -AOR- ULTIMATE URBAN FAVORITES』と同時リリースとなっている。

ディスク1の1曲目はchar“Smoky”(76年)で、まずそのパワフルなグルーヴに圧倒される。アルバム・タイトルに掲げられた〈GROOVE〉を象徴する一曲だ。続いては、〈シティ・ポップ・アンセム〉の冠がふさわしい杏里“WINDY SUMMER”。角松敏生の仕事として知られ、イントロのキラキラと光るようなシンセサイザーの音色がまぶしい。〈これぞシティ・ポップ〉という軽快かつブリージンな王道感。見事なサックス・ソロに嘆息してしまう。

その後は松原みき“真夜中のドア/Stay With Me”(79年)、吉田美奈子“Light’n Up”(82年)などが収められているのだが、それら定番と並んで真心ブラザーズ“ENDLESS SUMMER NUDE”(97年)や藤井隆“未確認飛行体”(2002年)といった楽曲が置かれているあたりに〈タワレコらしさ〉が感じられる。この2曲はSMAPとの仕事などで知られるCHOKKAKUがアレンジしたもの。〈90年代や2000年代のシティ・ポップも聴いてほしい〉という思いが滲んでいる(なお“未確認飛行体”は作詞が松本隆で、作曲がKIRINJIの堀込高樹だ)。

またディスク2には冨田ラボ“Like A Queen feat. SOULHEAD”(2005年)、bird“SPARKLES”(2006年)と、冨田恵一ワークスがさらりと配置されている。ディスク2で特に注目してほしいのは砂原良徳“CLOUDS ACROSS THE MOON”(95年)。これはSANDIIが歌うラー・バンドのカヴァーで、ブレイクビーツによるダンス・ミュージック的解釈がなされているのだが、ホーンのリフレインはたしかにシティ・ポップ的。この選曲には〈大胆!〉と思わずうなる。

他にも吉田美奈子と角松敏生が携わった西城秀樹“BEAT STREET(single version)”(85年)、24丁目バンドがバックを務める超メロウな郷ひろみ“入江にて”(79年)、いかにも80年代後半なデジタル・サウンドのラ・ムー“RAINY NIGHT LADY”(88年)などなど、アイドル系の楽曲も選ばれている。こういったところも心憎い。

以上のようにこの『SUMMER BREEZE -CITY POP- ULTIMATE JAPANESE GROOVE』は、70年代後半~80年代前半のクラシックをただ並べただけのアルバムではなく、シティ・ポップの枠組みを自由に広げ、さらに2020年の視点がきちんと反映されている。タワーレコードのバイヤーの目利き、いや〈耳利き〉ぶりが伝わってくる逸品だ。

なので、〈最近よく聞くシティ・ポップって何? どんな音楽?〉という方にとっては格好の入門盤になるはず。また黄金期をリアルタイムで知るリスナーにとっては、当時を懐かしく振り返ることもできるだろう。その一方で、シティ・ポップに対する新たな視点も提供してくれるので、なかなかにユニークなコンピだと言える。

この夏のサウンドトラックとしてこれ以上ふさわしいものはない。さらに捻りも加わっているので、シティ・ポップ再考の一助にもなる。鈴木英人の見事なカヴァー・イラストレーションに彩られた本盤。ぜひタワレコ・バイヤーの選曲の妙を感じてほしい。

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