ブラジル音楽、クラシック、ジャズ、そして家族が織り成すビアンカ・ワールド
父親は、かのエグベルト・ジスモンチ。兄のアレシャンドレも、ギタリストとして活躍。そしてビアンカの夫ジュリオ・ファラヴィーニャはドラマーで、一緒のバンドで活動している。こんな音楽一家の中で、ひときわ華やかな存在であるビアンカ・ジスモンチ。彼女は、まさに大輪の花のような名花だ。
「私は子供の頃から音楽に囲まれて育ったので、ごく自然な成り行きでピアノを弾くようになり、15歳の時に父と初めて共演しました。また、最初からクラシック・ピアニストを目指していたわけでも、ジャズ・ピアニストを目指していたわけでもなく、自然に現在のスタイルになりました」
幼少時から家の中で父の演奏を目の当たりにしていたビアンカは、同時に古今東西の音楽をレコードを通じて自然に耳にしていたという。
「まずヴィラ=ロボスも含めたブラジル音楽全般。そしてクラシック。私は子供の頃からストラヴィンスキー、特に“春の祭典”が大好きでした。好きなクラシック・ピアニストは、キーシン、ホロヴィッツ、グールド。昔から好きなピアニスト兼作曲家は、アントニオ・カルロス・ジョビンとキース・ジャレットです」
この発言から分かる通り、ビアンカの音楽は、〈ブラジル音楽〉、〈クラシック〉、〈ジャズ〉、そしてもう一本の太い柱から成り立っている。それは、〈家族〉だ。昨年リリースされたアルバム『Sonhos De Nascimento』には、父や実母、育ての母、夫に捧げた曲に加えて、ジスブランコ(GisBranco)のパートナー、クラウヂア・カステロ・ブランコの出産を祝して作られた曲も並んでいる。そしてブックレットには、両親に抱かれている赤ちゃんの頃のビアンカ自身や妊婦姿のクラウヂアなどの写真が載せられている。これは、多義的な意味で〈家族〉のアルバムだ。
「その通りです。私にとって家族は何より大切なものであり、代々受け継がれていくということに対して重要な意味を感じています。育ての母の話をすると、彼女は女優で、しかもブラジル北東部の出身だけあって、明るく外向的な性格です。一方、父はやや内向的ですが、だからこそ相性が良いんでしょう(笑)」
ビアンカはツアー中も、ほぼ毎日のように父とメールのやり取りしているという。90年代以降、エグベルトは歌わなくなったが、次回はお父さんとデュエットしたら、と提案してみた。
「良いアイデアですね。でも私自身はシンガーとしてまだ駆け出しですから、その前に自分の歌唱力をもっと向上させなければ。それができた時に真剣に考えることにします(笑)」