なぜ、こんなにも美しい音楽をかけるのだろう。彼の場合、詩やメロディだけではない。爪弾かれる繊細なアコースティック・ギターの抑揚はあまりにドラマチック。幽玄なストリングスがそのドラマ性を盛り立て、時折入るハンドクラップはそれまでの静から明確な動を感じさせ、その度にこちらの胸をドキリとときめかせる。高い評価を得た初作から5年。その間に坂本慎太郎やデヴェンドラ・バンハートとのコラボでブラジル音楽ファン以外にもその名を広めたチン・ベルナルデス。厳選された音ひとつひとつが、ナチュラルに地声とファルセットを行き来する歌声がブラジル独特の浮遊感と相まって聴き手を夢の世界へと誘う。