2019年2020年2021年と続けてきた、タワーレコードスタッフが選ぶ今年のマイベストレコード。2022年も、もちろんお届けいたします! 今回は、過去最多の24人が全国の店舗から参加。今年の代表作からメディアの年間ベストでは取り上げられないようなマニアックな作品、レジェンダリーな再発盤まで、ジャンルを問わず、各々がレコードで聴いてほしいおすすめ盤、お気に入り盤を紹介してくれました。年末年始は、この記事をガイドに、お近くのタワレコでレコードディグはいかがでしょうか?

そして、今年もMikikiをご愛読いただき、ありがとうございました! また来年もどうぞよろしくお願いいたします。 *Mikiki編集部

★2022年末特別企画の記事一覧はこちら

 

TANAKAHMANN(新宿店)

PRESENTS 『FEELING LIKE A CHILD』 SOYOGO/ローソンエンタテインメント(HMV record shop)(2022)

いまやアジアも含めた海外でも人気のコンテンツとなったシティポップ。ただ、逆輸入でバズっているという楽曲の数々を聴くにつれ〈でもこれって歌謡曲じゃね?〉と違和感を感じたりしている皆さまにレコメンドしたい一枚がコチラ!

いまから42年前に大学生のアマチュアミュージシャンたちが集まり、卒業記念で制作されたという、so niceやはちみつぱい、YAMAMOTOなどの自主盤シティポップにも勝るとも劣らないクォリティーを誇る本作。当時、なんと7畳間の個人宅にメンバーが集まりわずか2週間で録音・制作されたという逸話もびっくりの素晴らしい内容で、演奏・アレンジ、ボーカルに録音まで、すべてにポップスの魔法が掛ったかのよう。

冒頭、オープニングを飾るブリージンなAOR①“ニューヨークなんて行かない”から始まり、ギターカッティングから始まるファンキーグルーヴ②“One Night Darling”メロウフローター③“Forget and Forgive”、さらに女性ボーカルがリードをとるミッドチューン④“ほほえみの中で”、続くニューソウルを彷彿とさせるアルバムタイトル曲⑤“Feeling Like A Child”……いやはや、この調子で全9曲すべてが水準以上の楽曲が続くんですよ。

正直、シティポップってアルバム通して全曲グッド!な作品ってホント一部なんですけど、そういった意味でもレアな作品だと思います。なにより彼らの若さ、そして音楽への愛がこの作品をスペシャルなモノにしていると思うんですよね。

今回のリイシューに際しての永井博氏による新装ジャケット(オリジナル盤のチープなジャケットも味わい深いですが!)、そしてオリジナルのマルチテープをヴィンテージのアナログ機器に通してリミックスした新マスター音源の音質も優秀だと思います。

個人的には〈シティポップ〉という狭い括りではなく、洋楽フュージョンやAORマニアにもオススメしたい〈アナログレコード今年の一枚〉に迷わず挙げたい一枚でした。

気になった貴方はオフィシャルサイトからチェックしてみてください。きっと一生モノの作品になりますよ!

 

田之上 剛(TOWER VINYL)

BABY BASH, THE BASH TONES 『Souldies Are Forever』 Mango Hill/Bashtown Music(2022)

JALEN NGONDA 『Just Like You Used To / What A Difference She Made』 Daptone(2022)

毎年恒例となっているマイベストレコード記事の依頼の季節になりました。今年もメジャー、インディーにかかわらず、ジャンルもソウル系を中心にロック、ジャズ、レゲエ、ラテンなどなど多岐にわたって聴きましたが、個人的には昨年以上に良質な作品のリリースが多く選盤にとても時間が掛かりそうな感じでした。

毎年レコード棚を整理する事も踏まえA to Zで何を買ったかを見直すのですが、タイミング悪くレコードの収納棚変更中で足の踏み場もない状況。そのため、単純に最近でも良く聴いている盤の中からアルバム1枚とシングル1枚に絞りオススメ盤をご紹介することにしました。

2003年に“Suga Suga”が大ヒットしたベイビー・バッシュを覚えてますか? そのベイビー・バッシュが手掛けたソウルバンド、バッシュトーンズの『Souldies Are Forever』が素晴らしい。チカーノソウルの重要人物ジョーイ・キニョーネス参加というだけで気になりますよね。しかも、良盤を数多くリリースしているマンゴー・ヒルからの発売です。1曲目の“Maybe It’s Time”を聴いてもらえればスイートソウル、チカーノソウル好きなら間違いなく刺さるはず。他にも盟友フランキー・Jやキッド・フロストが参加。近年のチカーノソウルの中でもアルバムとしてクォリティーが高いです。

そしてシングルではダップトーンから発売されたジェイレン・ンゴンダの“Just Like You Used To”が最近のお気に入り。印象的なファルセットではじまりパーカッションが心地よく入ってくる感じ、どこかで聴いた事があるこの雰囲気、完全にマーヴィン・ゲイです。情報が全くない状況で聴いたら、現行のシンガーだと思えないですよ。今、アルバムの発売が一番楽しみなアーティストです。

 

山口勝朗(なんばパークス店)

THE PRIMITIVES 『Lovely』 Demon(2022)

初めて自分のお小遣いで買ったCD作品で、初めてライブに行ったバンドという個人的に非常に想い入れの強いバンドのファーストアルバム(88年作)が、初頭にアナログ盤が再発され震えました。

80年代後半のUKシーンといえばニューウェーブやブリットポップ前夜の時代感の中で、このプリミティヴズが奏でる60年代風のレイドバックした3分間ポップスはむしろ新鮮で、短い楽曲の中に詰め込まれた極上のポップメロディーとノイジーなギターをアナログで聴くと一層レトロ感を演出してくれます。

冒頭収録のキュートなボーカルとノイジーなギターが絡むブレイクのきっかけとなったシングル“Crash”からラストのガレージーな“Buzz Buzz Buzz”まで、疾走感とワクワク感がレコードをB面に裏返すことすら楽しくさせてくれるかのようです。このリリースでメンバー監修によりリマスター音源が採用されており、音源もクリアになったことで今になって聴き取れていなかったアレンジも再発見。ターンテーブルに乗せてゆっくり音楽を聴く、という時間の大切さを改めて痛感しました。

 

石黒 亮(横浜ビブレ店)

JEFF BECK, ジョニー・デップ 『18』 Rhino(2022)

伝説のギタリスト〈ジェフ・ベック〉、名優〈ジョニー・デップ〉、奇跡の共演! それだけでも聴いてみたいという衝動に駆られた一枚で、俳優ではなくアーティストとしてのジョニーを存分に堪能できる作品です。2020年にデジタル配信されたジョン・レノン“Isolation(孤独)”、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのクラシック“Venus In Furs(毛皮のヴィーナス)”やマーヴィン・ゲイのソウルクラシック“What’s Going On”も収録された全13曲! ジェフ・ベックのギターと絡み合うジョニー・デップの伸びやかな歌声は、俳優の音楽業という枠にははまらない圧巻な歌声でした。ジャケットもカッコいいので、インテリアとしても活用してます。