夢を追い続けること
こうしてバンド・サウンドを軸に制作された『Dreamer』、全体の印象としては実にRe:NOらしさが詰まった作品だ。ツーバスのパワフルなドラムと速弾きギターを活かしたAldious時代を彷彿とさせるメタル曲から、パンキッシュなガールズ・ロック、ライヴでサークルモッシュが起きそうなメロコア曲、シンプルで温かなミディアム・バラードなど、Re:NOの歌声が映える楽曲が並ぶ。同時に新しい要素もふんだんに取り入れており、例えばゴシックホラーのような雰囲気に彩られた“Realize”ではスパニッシュ・テイストのギター・ソロがフィーチャーされていたり、引きずるようなヘヴィーなベースラインで始まる“Burn!”ではヴォーカルに深くエフェクトをかけ、オクターヴ上下のダブルで歌っていたりと、これまで聴いたことのないRe:NOの一面を垣間見ることができる。
特にRe:NOらしさを感じられるのが歌詞で、彼女の人生への向き合い方がまんま綴られているようにも思う。昔から彼女の書く歌詞は本当にストレートで、ラヴソングなら狂おしく燃え尽きるほど激しく、はたまたパンクな曲ならメッチャ攻撃的。思わず口を突いて出たセリフをそのままメロディーにはめていったんじゃないかと思うくらいノンフィクションな感じの曲も多い。『Dreamer』というタイトルが象徴しているが、今作では失って気づいた大切なことや大切な人、夢を追い続けることこそが自分にとって重要なんだと気付く過程がいくつも描かれる。夢なんか見なかったことにすれば楽に生きられるのかもしれないけれど、自分に嘘はつけない。結局すべては自分次第、夢を叶えるまでやるって覚悟を決めた!みたいな決意表明がアルバム全体に貫かれているのである。一周も二周もまわった後に〈やっぱり自分にはこれしかない〉と腹を括った人はブレない。彼女の夢の行く先を一緒に追いかけていきたいと思わせられる、エモーショナルなロック・アルバム――Re:NOのファースト・ソロ・アルバム『Dreamer』はそんな存在感と輝きを放つ意欲作なのである。
Re:NO在籍時のAldiousの作品を一部紹介。
左から、2015年作『Radiant A』、2017年作『Unlimited Diffusion』、2017年のミニ・アルバム『We Are』2018年のミニ・アルバム『ALL BROSE』(すべてRadiant A/Village Again)
演奏陣の関連作を一部紹介。
左から、SADSの2018年作『FALLING Ultimate Edition』(SPACE SHOWER)、小山将平が在籍するCYANOTYPEの2021年作『PORTRAITS』(よしもとミュージック)、レルエの2020年作『Eureka』(ビクター)、吉澤はじめが率いるMANTASAの2021年作『MANTASA』(dbr-music)