音楽 × 青春マンガ「ましろのおと」が描き続けた、津軽三味線の静かなる情熱

 津軽三味線奏者・澤村雪の〈音〉を探す旅を描いた、音楽 × 青春マンガ「ましろのおと」。邦楽のイメージを塗り変えた迫力ある音楽描写で注目を集め、「月刊少年マガジン」で12年にわたり連載された人気作が、この秋完結した。

 主人公は、伝説的津軽三味線奏者・澤村松吾郎を祖父に持つ高校生・雪。祖父の死をきっかけに失くしてしまった〈自分だけの音〉を求め青森から単身上京した彼が、さまざまな〈音〉に巡り合いながら奏者として成長していく。ライブハウスでロックのように鳴り響く三味線といった外連味あふれる序盤もいいが、実力派奏者・緒方洸輔や俊英・田沼総一らとのライバル対決は白熱の名シーンの連続。兄・若菜をはじめとした家族との複雑な関係性も丁寧に紡がれ、〈革新と継承〉という伝統の本質にも触れている。

 2021年、アニメ化に際して音楽監修を引き受けたのはもちろん、邦楽界の革命児・吉田兄弟。連載スタート時から作品に深く関わってきたという弟の吉田健一は、「(マンガの)再現というより、一曲一曲をゼロから創る作業でしたので、それぞれに試行錯誤しレコーディングに臨んでおります」と意気込みを語っていた。参加メンバーは若手中心で構成し、キャラクターの年齢に近い大学津軽三味線サークルにも参加してもらったという。

VARIOUS ARTISTS 『「ましろのおと」オリジナル・サウンドトラック 津軽三味線 音楽集』 eplus music(2022)

 12月には、コミックス最終巻の発売に合わせ、待望の『ましろのおと オリジナル・サウンドトラック 津軽三味線音楽集』が発売される。監修を行った吉田兄弟のほか、葛西頼之、柴田雅人、匹田大智など注目の若手三味線奏者が参加。葛西が書き下ろした〈幻の〉即興曲“春暁”や、ストーリーに合わせて新節・新旧節の演奏を織り交ぜた“津軽じょんがら節”などが収録され、静謐で熱い世界観を織りなしている。キャラクター名と演奏者名が併記された、作品から抜け出たような仕様も嬉しい。青春の軌跡とともに、〈記憶に残る 日の本の音〉を胸に刻みたい。

 


収録曲
一、津軽よされ節 澤村雪/柴田雅人
二、津軽じょんがら節(新節)澤村雪/柴田雅人
三、津軽小原節 澤村雪・澤村梅子/柴田雅人・吉田昌紀子
四、即興曲 澤村雪・澤村若菜/吉田兄弟
五、春暁 澤村雪/柴田雅人
六、津軽じょんがら節(新節)澤村雪・神木清流/柴田雅人・柴田愛
七、清流オリジナル 神木清流/匹田大智
八、春暁 澤村松吾郎/葛西頼之
九、津軽あいや節(ロック)田沼舞/杉山大祐
十、津軽じょんがら節(新節・大会団体戦 長唄手入り)澤村雪・部員/永村幸治・杉山大祐・田中風真
十一、津軽じょんがら節(新節・大会団体戦 優勝)梶貴臣・部員/田中風真・杉山大祐・永村幸治
十二、津軽じょんがら節(新節・大会団体戦)田沼舞・部員/杉山大祐・田中風真・永村幸治
十三、津軽じょんがら節(新節・大会団体戦)荒川潮・部員/大塚晴也・柴田雅人・柴田愛・柴田佑梨・葛西頼之
十四、津軽じょんがら節(新旧節・大会個人戦 トゥイン入り)荒川潮/大塚晴也
十五、津軽じょんがら節(新旧節・大会個人戦)澤村雪/柴田雅人
十六、津軽じょんがら節(新旧節・大会個人戦 優勝)田沼総一/匹田大智