ジャズ・ギターの師弟ふたりが交わすインティメイトなデュオ・ライヴ

 片や、音楽生活70周年を迎えた現在も精力的な演奏活動を展開する中牟礼貞則。片や、1980年代からジャズ演奏やポップスのサポートなど幅広く活躍する三好“3吉”功郎。日本のギター・レジェンドのふたりがデュオ演奏を繰り広げるライヴ・アルバム『三好“3吉”功郎 meets 中牟礼貞則 Guitar Duo ~ Live at World Jazz Museum 21』が発表された。中牟礼を師と慕う三好に話を聞いた。

中牟礼貞則, 三好“3吉”功郎 『三好“3吉”功郎 meets 中牟礼貞則 ~ Live at World Jazz Museum 21』 Nadja21/キングインターナショナル(2022)

 「約40年前に、地元・大分にあるジャズ喫茶のマスターに書いてもらった紹介状を握りしめ、右も左も分からないまま上京した僕の面倒をみてくれたのが中牟礼さんです。彼のギターの魅力は、外側はすごくふわっと柔らかそうに聞こえるのに、芯は鋼のように強く、一太刀で人を斬れるような鋭さがある点。これは他の人が持ち得ない味わいです」

 師匠への想いを熱く語る三好にとって今回の共演は様々な奇跡が重なって実現したものだった。

 「僕が独立してからはずっと会えずにいたのですが、2022年4月に数10年振りに、お互いのツアー中に九州のホテルの駐車場で、本当だったらすれ違っているようなタイミングで偶然に出会うことができ、抱き合って再会を喜びました。そうしたところ、その1か月後に中牟礼さんとのギター・デュオの話が飛び込んできました。僕は今までギター・デュオをしたこともなければ、師匠と共演したこともありません。とても緊張して、一旦はお断りしようかと思ったのですが、師匠は既にOKを出しているとのこと。4月の再会に運命的なものを感じた僕はそこに飛び込んでみました」

 そうして実現したふたりのライヴは、ジャズらしい即興演奏の輝きが随所に感じられるものだ。

 「何の打ち合わせも無く、簡単なサウンド・チェックをしただけで、互いに持ち寄った譜面を渡し合って始められたのですが、イントロもエンディングも決まっていません。そこにあるのは、互いに発し合う音だけ。それを頼りにというか、しがみ付くようにして演奏したライヴ。師匠はいつも通りの自然体でしたが、僕はとにかく必死(笑)。終わってから何の記憶も無いという演奏を初めて経験しました。後日、恐る恐るプレイバックを聴いてみたら、20代の頃に覚えたきりで今は使っていないようなフレイズが出ていたのには驚きでしたね。本当に無我夢中でやってたんだなと思いますが、それと同時に、無意識だからこそできた本当の自分の音楽が表現できたと実感しています」

 


LIVE INFORMATION
中牟礼貞則&三好"3吉"功郎 アルバム発売記念ライヴ
2023年2月19日 (日) 東京・新宿 ピットイン
開場/開演:18:00/18:30
出演:中牟礼貞則(ギター)/三好“3吉”功郎(ギター)
http://pit-inn.com/ (新宿・ピットイン)
http://sankichi.fun/(三好“3吉”功郎HP)