トム・ヴァーレインが逝去したと、複数のメディアが報じている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、トムは昨日1月28日に米NYのマンハッタンで逝去。73歳だった。

トムの死は、彼の長きにわたる音楽仲間であるパティ・スミスの娘ジェシー・パリス・スミスによって発表されたそうだ。死因は伝えられていないが、〈短い病気のあとに〉亡くなったという。また、生前のトムと親しかったジミー・リップ(トムのソロ作の数々に貢献し、2007年からは再結成後のテレヴィジョンに参加している)によると、〈最期は私や親しい友人たち4人の手を握り、愛に囲まれながら穏やかに旅立った〉そうだ。

トム・ヴァーレインことトーマス・ミラー(Thomas Miller)は1949年、米ニュージャージー州のデンビル生まれ。幼い頃にピアノ、そしてジャズからサクソフォンを学び、ローリング・ストーンズの“19th Nervous Breakdown”(66年)との出会いからロックとギターに惹かれていき、詩への興味も強かったという。また、高校生時代には、のちにネオン・ボーイズやテレヴィジョンをともに結成することになるリチャード・ヘルに出会っている。

NYCに移ると、フランスの詩人ポール・ヴェルレーヌからステージネームを取って〈トム・ヴァーレイン〉を名乗るように。そして、72~73年には、ヘル(ベース)、ビリー・フィッカ(ドラムス)とともにネオン・ボーイズとして活動。その後、リチャード・ロイド(ギター)を加えて、バンドは73年にテレヴィジョンになる。テレヴィジョンは、伝説的なベニューCBGBやマクサス・カンサス・シティを中心に活動し、プロトパンク/NYパンクの中心的なバンドとして注目を集めるようになった。

ネオン・ボーイズの楽曲“That’s All I Know (Right Now)”。録音は73年とされている

75年、ヘルは素行不良からトムによってバンドをクビにされ、代わりにフレッド・スミス(ベース)が加入。同年、テレヴィジョンはシングル“Little Johnny Jewel”でデビューした。この頃にトムはパティ・スミスと付き合いはじめたといい、彼女の傑作『Horses』(75年)にギタリストとして参加している。

パティ・スミスの75年作『Horses』収録曲“Break It Up”。ギターはトム・ヴァーレイン

77年にデビューアルバムにしてロック史に刻まれる名盤『Marquee Moon』を、78年にセカンドアルバム『Adventure』を残し、テレヴィジョンは商業的に成功することなく解散。末期にして全盛期のバンドの激しい演奏は、78年に録音されたライブアルバム『The Blow-Up』(カセットテープで82年にリリースされた)で聴くことができる。

テレヴィジョンの77年作『Marquee Moon』収録曲“Marquee Moon”

テレヴィジョンの82年のライブアルバム『The Blow-Up』収録曲“The Blow-Up”