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ジャズからヒップホップ、トリップホップへ――BON-SANのルーツ

――前作のインタビューではtamiさんと田口さんのルーツをお伺いしたので、今回はBON-SANのルーツもお伺いできればと思います。

BON-SAN「両親が音楽をやっていたので、小学校に入る前くらいからドラムをやっていて、当時はTOTOがすごく好きで。

それから父親が〈いま世界でいちばん上手いドラマーはこいつや〉みたいな感じで教えてくれる人に順番にハマっていきました。それで、TOTOのジェフ・ポーカロ、デニス・チェンバース、ジャック・ディジョネットとかを聴いて。

それと同時に中学から親のバンドでディスコやサンバを叩いて、専門学校に行ってからはジャズとフュージョンを学びました。ただ演奏の現場はあんまり合わなかったんですよね」

――小箱でセッションをして、みたいな感じではなかった?

BON-SAN「そういうこともやりながら、〈自分はちょっと違うんかな〉と思ってたときに、ピート・ロックにハマって、そこからひたすらヒップホップを作るようになって。

その後にポエトリーのユニットでヒップホップを自分でも演奏するようになり、それからtamiさんと出会って、ビョークとかマッシヴ・アタックとかにハマっていくという流れですね。

ロックもそうなんですけど、TAMIWに入ってから聴きだした音楽がたくさんあるので、それをどうヒップホップと混ぜていくのかは常に考えてます」

――まさに、どちらかというとUK寄りなtamiさんの要素と、どちらかというとUS寄りなBON-SANの要素が混ざっているのがTAMIWのおもしろさだなと。

tami「他のメンバーもそうですけど、純粋に好きなものは全員違うので、このバンドで〈カラオケに行く気持ちよさ〉みたいなのはないと思うんです(笑)。みんな違うんだけど、みんな鍛錬の人というか、それぞれを積み重ねて、よくなることに喜びを感じてる人たちだと思うので、そこがバンドとしてうまくハマってる気がします」

 

声の表現としてのラップへの初挑戦

――新作ではtamiさんが初めてラップにもトライしていますが、これもtamiさん一人での活動ではやっていないことかもしれないですね。

tami「100%やってないです(笑)。そもそも私は〈歌が歌いたい〉と思ってここまでやってきてるので、〈私がラップしてどうすんの?〉とも思っていたし。何年か前から頭の中ではラップのことも考えたりはしてたんですけど、〈できんし〉となってました。

でもそういう自分の固定観念や先入観が少しずつ薄まって、今回がチャレンジのタイミングだったというか」

――前作にはシャフィーク・フセインが参加してラップをしていたし、インタビューでもリトル・シムズへの憧れを話してくれましたよね。

tami「リトル・シムズはそもそも声がめっちゃ好きで、〈なんであの声にならないんやろ?〉って、練習したりもして。でもやっぱり声はどんなに寄せても同じものにはならないから、自分の声でやるしかないじゃないですか?

私は昔から自分の声が普通なことに悩んでいて、常に壁にぶち当たって、こけて、もう一回立ち上がっての繰り返しでした。でもそれを繰り返すことでよくなっていくと信じてやってきて。

ラップにしても、私がかっこいいと思うラップと、自分ができるラップは違ったりするけど、私のラップの歴史はこのアルバムからだから、これからもっとよくなっていくはず。〈ボーカルは歌だけ歌ってればいい〉と思い過ぎずに、声を使ってできることにもいろいろチャレンジしたいなって」

――最初にラップにトライしたのはどの曲だったんですか?

BON-SAN「たぶん“Dear Ghost”のデモで途中にラップを入れてて」

tami「そうや。デモだともっと歌のウェイトが少なくて、ラップっぽい、低い声でしゃべる感じを入れてて。最初は〈ラップなんてできん〉と思ってたけど、しゃべる感じならいけるかもと思って、スピードもあんまり速くない、FKAツイッグスとかがやるようなテイストを試して。

“Dawn Down”とかもその感じでやって、それができたから、〈じゃあ、速いラップも試してみよう〉って、“Eyes on Me”を作りました」

『Fight for Innocence』収録曲“Eyes on Me”