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広島はぼくにとってとても重要な街だ

――ここ数年、あなたは来日すると広島のファンの前での演奏を欠かさない。ぼくも前回、広島公演に足を運び、そこでのあなたと観客の皆さんとの関係の素晴らしさに心動かされ、今回もうかがうんですが。

「そう言ってくれて、嬉しいよ」

――広島への思いを教えてください。

「核兵器を人間に対して使った国は、唯一アメリカだけだ。

広島はぼくにとって、とても重要な街だ。核兵器がどれほどの破壊力があるものなのか、平和記念資料館を訪れるとそれを目の当たりにできる。確かに、戦時下の出来事で、国家間にできた分断はどうしようもなく大きく、憎悪の気持ちもあっただろう。でもね、人が密集した、子供や老人を含めた一般市民が暮らす街に原爆を投下するという判断をくだしたことは、〈それが戦争というものだ〉では済まされないことだ。

そしていま、ロシアが、〈おれたちに手を出すな、お前たちと同じ核兵器をおれたちも持っている。使う覚悟がある〉と言っている。核の脅威を人はなかなか想像できない、それが問題なんだ。皆、そんなことが自分の国に起きるとは思っていないからね。

だけど、世界に一つだけ、そんな破壊を、悲劇を実際に体験した国があることを知り、それを忘れないことがとても重要だと思う。毎年、広島と長崎の原爆記念日には追悼を捧げている。二度と、絶対に繰り返されてはならないことだし、亡くなられた方への敬意を込めてね」

――あなたのコンサートでは、客席からのリクエストが多く、それにまたあなたも応える。時々、余りにもリクエストが多いので、あなたが考えているその日の進行を妨げているんではないかと、思ったりするんですが、それはどうですか(笑)。

「いや、気に入っているんだ。確かにセットリストは用意しているよ。万が一、誰もリクエストを叫んでくれなかったときのためにね(笑)。リクエストを期待して、コンサートにはのぞんでいるんだ。

時には、随分長く歌っていないような曲を叫ばれることもある。そこが日本のファンの素晴らしいところなんだけど、ぼくが一度もレコーディングしたことがない曲を知っててね。最初は、発音が日本語風だったのでわからなくて、〈えっ?〉と聞き返し、〈“Shadow Dream Song”!〉、〈なんだって!?〉とやりとりしながら、一度も人前で歌ったことのない曲、いや、以前ロイヤル・アルバート・ホールで一度だけリクエストされたことがあったから、正確には日本は二度目だったんだけど、その“Shadow Dream Song”をやったことがある。

リクエストは有難いし、光栄だよ。それになにより、リクエストはバンドが楽しんでいるよ。一度も演奏したことがない曲の場合、全員がベーシストの顔をみる。ベースは間違うと目立つし、ごまかしが効かない。だから、彼がやれそうな顔をしていたら、やろうというふうにね。他の楽器は少しばかり音程があやふやでもどうにかなる。殊に、グレッグ・リースとかはもともと順応力がすごいから、なんとでもしてくれる。デヴィッド・リンドレーもそうだったよ」

 


LIVE INFORMATION
Jackson Browne Japan Tour 2023
2023年3月20日(月)大阪・中之島 フェスティバルホール ※SOLD OUT
2023年3月22日(水)広島・JMSアステールプラザ 大ホール
2023年3月24日(金)愛知・名古屋市公会堂
2023年3月27日(月)東京・渋谷 Bunkamura オーチャードホール ※SOLD OUT
2023年3月28日(火)東京・渋谷 Bunkamura オーチャードホール ※SOLD OUT
2023年3月30日(木)東京・渋谷 Bunkamura オーチャードホール〈追加公演〉
企画・招聘・制作:ウドー音楽事務所
協力:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
https://udo.jp/concert/JacksonBrowne2023

 

RELEASE INFORMATION

JACKSON BROWNE 『Downhill From Everywhere』 Inside/ソニー(2021)

リリース日:2021年7月23日
品番:SICX-30122
フォーマット:CD/アナログ盤(輸入盤のみ)/デジタル配信(通常/ハイレゾ(96kHz/24bit))
対訳:中川五郎
解説:五十嵐正
価格:2,860円(税込)
3面紙ジャケット仕様(FSC認証紙使用)/高品質Blu-spec CD2仕様(日本盤のみ)/歌詞・対訳・解説付
配信リンク:https://JacksonBrowne.lnk.to/DownhillFromEverywhere

TRACKLIST
1. Still Looking For Something
2. My Cleveland Heart
3. Minutes To Downtown
4. A Human Touch
5. Love Is Love
6. Downhill From Everywhere
7. The Dreamer
8. Until Justice Is Real
9. A Little Soon To Say
10. A Song For Barcelona

 


PROFILE: JACKSON BROWNE
1948年、独ハイデルベルクに生まれ、米カリフォルニアにて育つ。68年にニッティー・グリッティー・ダート・バンドに参加後、NYのグリニッジ・ヴィレッジでティム・バックリーやニコと活動。再びカリフォルニアに戻り、バーズとリンダ・ロンシュタットに曲を提供。その後、アサイラムと契約。72年のデビューアルバム『Jackson Browne』は高い評価を受け、シングル“Doctor, My Eyes”はトップ10ヒットとなった。イーグルスのデビューヒット“Take It Easy”のソングライターでもあり、『Late For The Sky』(74年)、『The Pretender』(76年)、『Running On Empty』(77年)、初の全米1位を獲得した『Hold Out』(80年)など、傑作・名作アルバムは数知れず、当時成熟期に入ろうとしていたロックシーンにおいてシンガーソングライターというスタイルを確立した。2021年の『Downhill From Everywhere』まで15作のオリジナルアルバムをリリース(ほか、ベスト盤、ツアーCDなども)。人生に対する真摯な姿勢に裏打ちされた、詩情あふれる内性的な歌詞と繊細でメロディアスな歌の数々でローリング・ストーン誌から〈史上最も偉大なソングライター〉の1人に選出され、現在もアメリカを代表する偉大なるシンガーソングライターとして人々の心の奥深くにまで届く音楽を送り続けている。2004年、ロックの殿堂入り。2007年にはソングライターの殿堂入りも果たしている。2018年には世界平和、環境の調和、社会的正義への彼の才能を活かした長年に渡る多大な貢献に対して、音楽家として初のガンジー・ピース・アワードが授与された。 2021年3月には『Late For The Sky』がアメリカの国家保存重要録音登録制度に登録され、米議会図書館に〈文化遺産〉として永久保存されることになった。