赤松林太郎がクララに向けられた愛情をこだわりの選曲で描く

 2000年にクララ・シューマン国際コンクールに入賞以降、演奏に教育、執筆と、世界を股にかけて活発な活動を展開するピアニストの赤松林太郎。入賞から20年以上の時を経て、クララへ向けられた愛情をテーマとしたCD『クララに捧ぐ』をリリースした。

 「シューマンやブラームスの作品をこうしてCDにするのは初めてです。この二人に取り組むというのは自分の中で納得のいくタイミングがこないとできないと思っていたのですが、コロナ禍という出来事があり、クララに向けられた愛情をテーマにしたものに焦点をあてたいと思いました。これほど、ただ〈好き〉という感情ではない様々な形の愛を向けられた人はそういないと思います」

赤松林太郎 『クララに捧ぐ』 キングインターナショナル(2023)

 収録曲で最も規模の大きい作品は“クライスレリアーナ”だが、先に決まったのはシューマンの歌曲集“ミルテの花”の第7曲〈蓮の花〉(クララによる編曲版)、そして“ユーゲントアルバム”の第21曲〈無題〉という小さな作品だったという。

 「クララの編曲は、シューマンの音楽の本当の理解者だということ、彼女が夫の芸術家としての精神を守り、言葉に対する純粋な愛情を我々に届けてくれていると思うのです。“ユーゲントアルバム”は親が子供に注ぐ愛情の眼差しに溢れた作品です。“クライスレリアーナ”にあるような熱い情熱ではなく、言葉にできないあたたかさがありますね。それに感銘を受けたのです」

 シューマンを尊敬し、クララと恋愛関係にあったのではという噂のあるブラームスの作品も、赤松ならではのこだわりによる選曲。弦楽六重奏曲第1番の第2楽章のピアノ編曲版(クララに献呈)に、ブラームスの遺作となったオルガンのための“コラール前奏曲”の第8曲“一輪のバラが咲いて”(ブゾーニによる編曲)となっている。

 「私はブラームスとクララの間に恋愛関係があったのかどうかには興味はありません。ただ、クララが亡くなった知らせを受けて1年後には彼が亡くなったという事実、そして残っている書簡での本当に心からのやりとりというものからロベルトとの間にあったものとは違うかかわり方、ブラームスならではの誠実さというものに惹かれました。こういったものに触れるたび、またここ数年のコロナ禍というタイミングもあって、私自身、周りの方との関わり方について改めて想う機会が増えました。そういった想いを今回こうして形にすることができ、本当に感謝しています」

 


LIVE INFORMATION
弘前さくら祭り 赤松林太郎コンサート
2023年4月30日(日)青森・弘前市民会館大ホール

ピアノリサイタル
2023年6月18日(日)大阪・庄内 ザ・カレッジ・オペラハウス(大阪音楽大学)

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