初めて観るオペラに最適! 子供たちとベテラン勢との夢の共演
最近、子ども向けのオペラ公演に上質のものが増えてきた。創意に富んだ公演が次々に計画され、オペラの中でも最も発展しつつある分野といえそうだ。その中で20年近く続いている東京文化会館の〈オペラBOX〉は、最も豪華で質の高い企画の1つだろう。観て楽しむだけでなく、同時開催のワークショップ〈オペラをつくろう!〉に公募で集まった子どもたちが、合唱やダンス、演技、工作などで実際の公演に参加する。プロの音楽家と子どもたちが一緒になって作り上げる舞台は活気にあふれ、小学生から大人までみんなで楽しめる素敵なオペラとなっている。
今年の演目はメノッティ作曲“Help! Help! グロボリンクスだ! ~エイリアン襲来!!~”。SF風のスリルに富んだ物語で、子どもたちの乗ったスクールバスが得体の知れない宇宙人に襲われて一大事! 恐怖と不安で大騒ぎになるが、宇宙人はピーピーポーポーと電子音を発している。ならばこちらはナマ演奏で対抗しようと、先生も生徒もヴァイオリンや打楽器、歌などで大合戦。ナマの音楽は電子音に勝てるだろうか? 美しく親しみやすいメノッティの音楽が、子どもたちの勇気と冒険心を温かく表現して感動的だ。
メノッティ(1911~2007)がアメリカでこのオペラを発表したのは1968年。電子音楽が世界の音楽界で脚光を浴びつつあった時代である。電子音楽と、電気を使用しないアコースティック音楽との比較や優劣がさまざまに論じられていた。そうした風潮の中でこのオペラが発表されたことに、メノッティの明確な主張が見てとれる。オペラの最後は、結局、ナマ演奏をにぎやかに盛り上げた子どもたち(こども防衛合唱隊)がグロボリンクスをやっつけて、ハッピーエンドになるのだから。
出演者にそうそうたる顔ぶれがそろっているのも大きな魅力だ。トップクラスの実力派に加え、同館主催の東京音楽コンクールに入賞した若手も重要な役を担う。種谷典子(エミリー)、佐藤美枝子(音楽の先生)、折江忠道(校長先生)、岡昭宏(バスの運転手)、市川和彦(学校の門番)、八木寿子(算数の先生)、V.ユシュマノフ(国語の先生)、奥秋大樹(理科の先生)といった面々だ。器楽は岸本萌乃加(ヴァイオリン)と髙橋裕子(ピアノ)を中心に、歌手たちが手製の打楽器などで威勢よく演奏を盛り上げる。グロボリンクスはダンサーの鷲田実土里を中心に子どもたちによる〈ダンスぐろぼりん〉が演じる。他に朝岡聡(アナウンサー)も登場。演出は岩田達宗、指揮は柴田真郁。
LIVE INFORMATION
東京文化会館オペラBOX
〈Help! Help! グロボリンクスだ! ~エイリアン襲来!!~〉(全1幕/日本語上演)
2023年9月24日(日)東京文化会館 小ホール
開場/開演:14:30/15:00
台本・作曲:ジャン=カルロ・メノッティ
指揮・音楽統括:柴田真郁
演出:岩田達宗
■出演
エミリー:種谷典子(ソプラノ)
音楽の先生:佐藤美枝子(ソプラノ)
校長先生:折江忠道(バリトン)
バスの運転手:岡昭宏(バリトン)
学校の門番:市川和彦(テナー)
算数の先生:八木寿子(メゾ・ソプラノ)
国語の先生:ヴィタリ・ユシュマノフ(バリトン)
理科の先生:奥秋大樹(バス)
グロボリンクス:鷲田実土里 ダンスぐろぼりん
アナウンサー:朝岡聡
児童合唱:こども防衛合唱隊
演奏:岸本萌乃加(ヴァイオリン) 髙橋裕子(ピアノ)
https://www.t-bunka.jp/stage/18804/