愛知県芸術劇場コンサートホールで6月1日に開かれたシンガー・ソングライター絢香の〈PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2024〉を聴いた。柴田真郁指揮、京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団との共演で、絢香にとってはデビュー3年後の2009年以来となるシンフォニックコンサートだ。

 開幕を告げる序曲は、大ヒット曲“三日月”がモチーフ。オーボエの郷愁あふれる旋律、管と弦の牧歌的な演奏が聴衆を包み込んだ。余韻の中、“The beginning”のイントロが流れると絢香が登場した。レモンイエローのドレスにシースルーのロングジャケット。清らかな水滴が静寂を穿つように、絢香の声が響いた。

 トークでは「リハーサルからずっと幸せな気持ちで歌った。森の中で癒しのマイナスイオンが降ってくる感覚。皆さんもたくさん浴びて」と語りかけた。続く“ツヨク想う”は壮大に、“百年十色”は情感豊かに切々と、スローバラードの“あいことば”は、身振りを感情に共鳴させるように歌う。「気持ちよくて、夢の中にいるみたい」と喜びを口にし、前半最後は“みんな空の下”を披露した。

 後半はオケによるオペラの名曲で再開。絢香が登場するとピアノが静かに“三日月”のイントロを奏で、「君に届け この想い」という歌詞は、そのまま聴衆へのメッセージになった。

 5月29日にリリースしたばかりの“ずっとキミと”も披露。13年一緒に暮らす双子の愛犬トイプードルのアオ、ラキへの想いを綴った。「ミュージックビデオも一緒に撮影し、宝物になりました」。愛犬と散歩を楽しむような軽快な曲で笑顔の絶えない絢香。“突き破る本能”“Through the ages”の歌唱では大人の魅力があふれた。

 「オーケストラで歌いたかった」と最後に歌ったのは“beautiful”。声域も声量も豊かな絢香の歌唱の魅力を際立たせる編曲だった。

 鳴りやまないアンコールの拍手に“にじいろ”で応えた。イントロで手拍子が起こり、1800席を埋めた聴衆の一体感は最高潮。喝采と拍手の中、3度ステージに戻っては両手を胸に当てて感謝の意を示した。

 終演後は「普段ライブで歌う楽曲たちが、いつもと違う景色を見ながら歌った」と充実を口にし、「素晴らしい音を何かを通して聴くのがもったいなくて、イヤモニをつけず身体で感じながら歌った」と振り返った。

 2年後にデビュー20周年を迎える。「作品をしっかり作り続けて特別な年にしたい。今日のようにたくさん新しいことをやっていきたいです」。時空を超えて心をつなぐ――。シンフォニックコンサートは、そんな絢香ならではの作品世界の、新たな魅力を体感できる場へといざなってくれた。

 6月8日には世界遺産・薬師寺東塔の落慶記念奉納の特別公演〈絢香 SYMPHONIC CONCERT in 薬師寺〉、12、13日には東京文化会館大ホールで〈絢香 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2024〉がある。

 


SETLIST
1. 序曲 OVERTURE
2. The beginning
3. ツヨク想う
4. 百年十色
5. あいことば
6. みんな空の下
7. 歌劇「エフゲニー・オネーギン」より”ポロネーズ”    
8. 三日月
9. ずっとキミと
10. 突き破る本能
11. Through the ages
12. beautiful

ENCORE
13. にじいろ