TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」第1クール（2022年10月〜12月）を鮮やかに彩った鷺巣詩郎の劇伴を収録したオリジナルサウンドトラック第1弾『TV Animation BLEACH THE BLOOD WARFARE Original Soundtrack I』がリリースされた。そんな本作について、最初期からアニメ「BLEACH」を支え続ける鷺巣詩郎のキャリアを軸にライターの照沼健太に解説してもらった。 ＊Mikiki編集部
鷺巣詩郎のライフワークの一つ「BLEACH」
「週刊少年ジャンプ」にて2001年から15年以上にわたり連載されていた大人気漫画「BLEACH」。その20周年記念プロジェクトの一つとして発表されたのが、最終章「千年血戦篇」のアニメ化である。TVアニメとしては約10年ぶりの新作となった「BLEACH 千年血戦篇」は、全4クールが予定されており、第1クールは2022年10月〜12月に放送され、現在は第2クール「BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-」が2023年7月から放送されている最中だ。
この『TV Animation BLEACH THE BLOOD WARFARE Original Soundtrack I』は、そんなTVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」の劇伴を集めたオリジナルサウンドトラック第1弾である。作曲を務めるのは、「エヴァンゲリオン」シリーズほか庵野秀明監督作品の常連として知られる鷺巣詩郎。鷺巣は2004年10月放送開始時から一貫してTVアニメ「BLEACH」の音楽を担当しており、アニメ公式サイトのインタビューにおいて「BLEACH」の仕事を〈日常〉と表現するなど、ライフワークの一つとも言える作品となっていることが伺える。
「エヴァ」や「シン・ウルトラマン」との比較で浮き上がる集大成的内容
そんな長い年月をかけての仕事であることが影響しているのだろうか。誤解を恐れずに言うならば、このサウンドトラックは近年の鷺巣詩郎の作品群の中でもとりわけ「エヴァ新劇場版」度の高い作品となっている。映画音楽録音の聖地の一つであるロンドンのアビー・ロード・スタジオにて音楽がレコーディングされた2007年「ヱヴァンゲリヲン新劇場版：序」以来、鷺巣詩郎の音楽は格段にスケールアップした印象があるが、本作において鷺巣はそんな「エヴァ新劇場版」シリーズで培ったノウハウを全面的に「BLEACH」の世界に注ぎ込んでいるように感じられる（2010年の「劇場版BLEACH 地獄篇」でもそうした方向性はあったが、本作はそれ以上だ）。「BLEACH 千年血戦篇」はTVアニメーション作品ではあるが、その音楽的クオリティーや風格には、映画音楽の品格があると言って何ら差し支えはない。
さらに、プロダクションのみならず、アレンジメントを含む楽曲面においても、本作は劇伴作家、鷺巣詩郎としてある種の集大成的な内容ともなっている。アルバムの冒頭“On the precipice - orchestra 2022”の時点から、鷺巣詩郎最大のシグネイチャーの一つである、壮麗かつ重層的なストリングスがこれでもかと炸裂。最終章を盛り上げるに相応しいシリアスなムードと壮大なスケールが展開されている。
続く2曲目“1142 TYBW piano synth suspense”では「ヱヴァンゲリヲン新劇場版：Q」以降の作品でその要素がうかがえた〈ハンス・ジマー以後の劇伴トレンド〉を強く感じさせるアトモスフェリックなシンセサウンドをベースとしながら、寂寥と切迫が共存した鷺巣らしいピアノを乗せることで、現代劇伴への鷺巣なりの向き合い方を見せている。
そして“1130 TYBW full of guitars”、“1106 TYBW CH united”、“Cometh the hour - avant garde 2023”といったハードな楽曲に顕著に表れているのが、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の冒頭のパリ市街地線を彩った“paris”と“euro nerv”、自由落下戦闘シーンで使われた“paranoia”、「シン・ウルトラマン」のメフィラス戦での“An Out of Body State 〈体外離脱〉”、「グリッドマン・ユニバース」の“HL pinch no vocals 2023”といった楽曲群に垣間見ることができる〈メタル的なギター使いの前傾化〉、〈大胆なカットアップの使用〉、〈スペイン音楽要素の導入〉など鷺巣詩郎の近作の特徴は本作でも貫かれている。誰もが認めて求める音楽家としてのシグネイチャーと、流行との接近に加えて個人的テーマをも感じさせる新たなモードの両立によって、本作の音楽は世間の〈鷺巣詩郎不足〉を埋めることになるだろう。
鷺巣詩郎は、原作者・久保帯人が新たに総監修を務めるTVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」でも続投を続けている数少ないメインスタッフの一人である。このサウンドトラックからは、「エヴァ」や「BLEACH」などの長寿シリーズ作品の世界観を一貫して構築する職人的プロフェッショナリズム、そして一人の音楽家として決して歩みを止めぬアーティストとしての姿勢の両方を感じられるはずだ。
RELEASE INFORMATION
リリース日：2023年9月27日（水）
品番：SVWC-70637
仕様・特典：
・特製ブックレット（鷺巣詩郎作曲のフルスコア『Blaze of soul - orchestra 2022』収録）
・キャラクターデザイン：工藤昌史描き下ろしジャケットイラスト
・封入特典：工藤昌史描き下ろしオリジナル・ステッカー（ジャケットイラスト）
価格：3,300円（税込）
TRACKLIST
1. On the precipice - orchestra 2022
2. 1142 TYBW piano synth suspense
3. Hollow zombie TYBW
4. 1130 TYBW full of guitars
5. 1130 TYBW full orchestra choir
6. 1142 TYBW full orchestra choir
7. 34 to 74 TYBW full orchestra choir
8. Cello solo by Martin Loveday
9. Blaze of soul - orchestra 2022
10. Hollowed 2022 B type
11. 1151 TYBW intro fanfare
12. On the precipice - post grunge 2022
13. Dark 2211 TYBW full orchestra
14. 1133 TYBW CH united
15. 2202 TYBW suspense
16. 1130 TYBW violin viola duo
17. Soundscape to ardor - harp 2022
18. 2219 TYBW racy orchestra
19. 1130 TYBW piano solitude
20. 1106 TYBW CH united
21. 2211 TYBW racy orchestra
22. Raw breath - orchestra 2022
23. BLEACH TYBW theme
24. 2215 TYBW strings
25. Number One - Bankai
BONUS TRACK
26. Nothing can be explained - bis 2022
27. Cometh the hour - avant garde 2023
リリース日：2024年2月28日（水）
収録内容：#14～#26
完全生産限定版特典：
・三方背ケース＋描き下ろしデジジャケット仕様
・特製ブックレット1：Episode Guide & Behind the Scenes II
・特製ブックレット2：Design Works 2
・リバーシブルアイキャッチカード
・特典映像
※仕様・特典は変更となる可能性がございます
■Blu-ray完全生産限定版
品番：ANZX-15963
仕様：2Blu-ray
価格：26,400円（税込）
■DVD完全生産限定版
品番：ANZB-15963
仕様：2DVD
価格：22,000円（税込）
リリース日：2023年4月26日（水）
収録内容：#1～#13
完全生産限定版特典：
・三方背ケース+描き下ろしデジジャケット仕様
・特製ブックレット1：Episode Guide & Behind the Scenes I
監督／田口智久と原作・総監修／久保帯人によるシーン解説&コメントも掲載
・特製ブックレット2:Design Works 1
キャラクター設定資料集第1弾として、現世&尸魂界サイドの設定を多数掲載
・リバーシブルアイキャッチカード(13枚)
用語集としても必見の各話アイキャッチをイラストカードとして全話分収録
・特典映像
ノンクレジットOP & ED、各種PV集に加え、本編#05で登場したベレニケ・ガブリエリ“Q”を久保帯人執筆の新規台詞によるフルVer.で収録
※仕様・特典は変更となる可能性がございます
■Blu-ray完全生産限定版
品番：ANZX-15961
仕様：2Blu-ray
価格：26,400円（税込）
■DVD完全生産限定版
品番：ANZB-15961
仕様：2DVD
価格：22,000円（税込）
