現在30周年イヤーを迎えている庵野秀明が生み出した人気アニメシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」。作品が誕生した1990年代当時だけでなく、2000年代以降に製作された新劇場版でも社会現象を巻き起こすなど、30年もの間、同シリーズは世界中の人々に衝撃を与え続けてきた。30周年イヤーが佳境を迎えた今、ライターの板谷祐輝に同シリーズの劇伴に注目してもらい、その魅力について綴ってもらった。 *Mikiki編集部
人々の心に深く刻まれたロボットアニメの金字塔
1995年10月4日、記念すべきTVアニメ第1話の放送から今日まで30年。その間、これほどまでに多様な作品に影響を与え、視聴者の心に深く刻まれ続けている作品も珍しい。それこそがこの作品の真の評価と言っても過言ではないだろう。
庵野秀明が手がけたロボットアニメ(敢えてこう表記する)の金字塔「新世紀エヴァンゲリオン」。ここでこの作品の解説や解釈を論じるのはあまりにも野暮なので割愛するが、今回は本作における音楽/劇伴の役割に焦点を当て語ることで、30周年という記念すべき節目を祝したい。
「エヴァ」(以降「エヴァ」と略すことを容赦願いたい)は、1995年から様々なメディアミックス展開を行ってきた。本稿では、1995年のTV放映版、1997〜1998年の旧劇場版(「DEATH (TRUE)²」「Air/まごころを、君に」など)、そして2007年から2021年にかけて公開された新劇場版4部作について触れたいと思う。
鷺巣詩郎が創造する「エヴァ」の音世界
「エヴァ」の音楽を担当する鷺巣詩郎は、劇伴の領域でもポップス/歌謡曲の領域でも数多の傑作を残してきた音楽家である。彼は「エヴァ」以前には「ふしぎの海のナディア」、以降では「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」などで庵野とタッグを組み、素晴らしい作品を世に送り出してきた。
彼の音楽の特徴は、〈器楽・合唱を生音で録るという音作りでのこだわり〉と〈ジャンルを横断して映像に最適な曲を付す〉ことにある。1990年代より拠点をロンドンやパリに移し、スタジオでのオーケストラ録音を本格的に行ってきた。その重厚壮大な音が、作品に深い奥行きをもたらすのである。たとえば、TV放映版23話の“THANATOS”、19話の“THE BEAST II”などに代表されるように、緊迫のシーンと相まって悲痛なストリングスや迫力あるブラスが圧倒的な没入感を演出している。
ただ、緊張感あふれるオーケストラばかりが注目されがちだが、日常や平和を描く音楽もバラエティに富んでいる。劇中では“RITSUKO”や“ASUKA STRIKES!”のようにオーガニックなサウンドのものから、ジャズやフュージョン、R&B、ファンクといった要素を取り入れた軽快なナンバーなども聴くことができる。こうしたメリハリある劇伴が作品全体を支えているのだ。
さらに、鷺巣 × 庵野のタッグによる作品が他にも存在することを活かした、作品を越境した選曲もファンを喜ばせている。「新劇場版:Q」では「ふしぎの海のナディア」の楽曲をアレンジした“Gods Message =3EM02=”“The Anthem =3EM07=”などが登場し、驚愕したファンも少なくなかっただろう。
また「エヴァ」の音楽といえば、印象的な“DECISIVE BATTLE”を筆頭とする“EM20”シリーズが挙げられる。おそらく〈デン、デン、デン、デン、ドンドン〉というリズムパターンを一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。このシリーズは「エヴァ」の劇中でも様々なアレンジが施された他、後年の「シン・ゴジラ」でも登場し、ファンを沸かせた。
このように、映像との相性、生音へのこだわり、作品を越境した楽曲使用という3つの武器をフルに活用しているからこそ、「エヴァ」の音世界は今にいたるまで色褪せないのである。


