余裕のない、満身創痍な主人公
Mr.Childrenは2023年に何を歌うのか? まもなくその答え合わせができそうだが、バンドから先に掲示されたヒントには、その答えの断片らしきものが刻まれているような気がする。
最新のMr.Childrenを解き明かす最初のヒント、それが先行配信された新曲“ケモノミチ”だ。
Mr.Childrenは2023年10月4日(水)にニューアルバム『miss you』をリリースする(配信は11月8日からを予定)。バンドとしては、アルバムリリースの報道まで〈ap bank fes ’23〉への出演以外で表立った動きはなかったが、いきなりのアルバム発売とホールツアー開催の動きに多くのリスナーが驚いたはず。
そうしたサプライズと期待を受けて先行配信されたのが“ケモノミチ”であった。アコースティックギターのストロークとストリングスのみのマイナー調のイントロには、不穏な空気が漂っている。〈風上に立つなよ/獣達にバレるだろ〉と唐突に始まるストーリーの描き方はMr.Childrenらしく、昨年まで日本中を巻き込んでデビュー30周年を華々しく祝っていたバンドとは思えない、まるで夢から醒めたかのように現実を突き付けてくる。
以降もシリアスなムードは続き、歌詞も時代の流れに対して満身創痍な思いが吐露されていく。そんな見通しの悪い道を手探りで進みながらも、桜井和寿はサビで〈誰にSOSを送ろう〉と高らかに叫び、〈束の間 潤う〉と締めくくる。壮大なストリングスの響きとは裏腹に、楽曲の主人公には全く余裕がないようだ。