牛尾憲輔、初の公式本「定本」が2025年2月27日に刊行されました。劇伴作家活動10周年を記念した本書では、生い立ちから現在までを語ったロングインタビューをはじめ、石野卓球&ピエール瀧(電気グルーヴ)や山田尚子、湯浅政明ら総勢26名の豪華ゲストが〈音楽家・牛尾憲輔の魅力〉について語っています。

そこで、今回は本書や関連アイテムなどを紹介。該当作品のTOWER RECORDS ONLINEの商品ページのリンクなどもあわせて掲載していますので、ぜひお役立てください。なお、TOWER RECORDS ONLINEでの取り扱いが終了している場合もございますので、ご了承ください。タワーレコード店頭での取り扱いは各店舗にお問い合わせください。

牛尾憲輔 『定本』 太田出版(2025)

 

石野卓球との出会いをきっかけに音楽活動をスタートさせ、電気グルーヴやDISCO TWINSなどの制作アシスタントでキャリアを積んだ後、2008年にソロユニット、agraphとしてデビューアルバム『a day, phases』をリリース、2014年にはアニメ「ピンポン THE ANIMATION」で本格的に劇伴作家としての活動をスタートさせた音楽家、牛尾憲輔。ナカコー、フルカワミキ、田渕ひさ子とのバンド、LAMAでの活動や電気グルーヴのライブサポート、数々の映画やアニメ作品の音楽制作など、幅広い活動を展開している。

agraph 『a day, phases』 キューン(2008)

湯浅政明 『ピンポン STANDARD BOX』 アニプレックス(2014)

そんな彼の劇伴作曲家生活10周年を記念したアニバーサリーブック「定本」が刊行された。自身のこれまでを語ったロングインタビューや対談、論考などで構成された〈ボリューム大〉な一冊で、牛尾の多面的な才能や魅力を堪能できる。

2部構成からなるロングインタビューの〈PART.01〉では、幼少期に音楽教室だった実家のピアノをきっかけに音楽を始めたエピソードからはじまり、影響を受けたさまざまなアーティストに関する記述が登場。〈ミュージシャンになる〉と決心したaccessの浅倉大介や、特集番組でピアノとシンセサイザーを使用してライブをしていた坂本龍一に牛尾少年が魅せられたという思い出、聴いた瞬間に〈これだ!〉と感じたというクラフトワークのセルフリミックスアルバム『The Mix』への想いも綴られている。“Computer Love”の間奏部分におけるパルス音だけを繰り返し聴いていたという、今の彼を象徴するかのようなルーツ話も。

access 『access BEST ~double decades + half~』 ソニー(2017)

KRAFTWERK 『The Mix』 Kling Klang/EMI/Parlophone(1991)

また、インタビュー内では電気のサポートメンバーの先輩でもあるKAGAMIやDJ TASAKAといった当時エレディスコ系で人気を集めていた日本人や、ウエストバムやアンダーグランド・レジスタンスなど海外のテクノ勢ミュージシャンの名前が次々と飛び出してくるほか、カールステン・ニコライやレイ・ハラカミ、ジョン・ケージなど電子/実験音楽系統のアーティストの名もピックアップされ、牛尾の音楽遍歴があきらかになっていく。

ALVA NOTO, 坂本龍一 『Vrioon』 NOTON(2002)

JOHN CAGE 『John Cage』 Cramps(1974)

一方で、コミック「ああっ女神さまっ」やテレビ番組「声♥遊倶楽部」が原点となったオタク趣味などについても言及。友人から借りたゲームソフト「ときめきメモリアル」にハマったり、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の二次創作小説を投稿サイトにアップしたりと、当時のオタクカルチャーを享受しまくっていた牛尾の姿も垣間見える。

庵野秀明, 緒方恵美 『新世紀エヴァンゲリオン NEON GENESIS EVANGELION Blu-ray BOX』 スターチャイルド(2015)

なかでも、その後の牛尾の人生を決定づけたと言っても過言ではない石野卓球との初邂逅からのエピソードは必見。石野のアシスタントとして仕事をスタートさせた後、石野が監修したコンピレーションアルバム『Gathering Traxx Vol.1』への参加やagraphのファーストアルバム『a day, phases』のリリースに繋がっていき、牛尾のなかで一番大事なプロジェクトになっていくagraphの活動の軌跡や信念などが文字数を割いて語られていく。