
金澤寿和
エヂと自分の関係は、アーティストと音楽ライターというよりも、海を越えた〈同好の士〉というべきものだと思っています。アルバム『AOR』が完成した時は、SNSを通じて突然エヂからメッセージが届き、「AORのアルバムを作ったから、是非あなたに聞いて欲しい」と、英語盤とポルトガル語盤が送られてきました。AORとシティポップのフリークで、レコード・コレクターでもある彼は、遠いブラジルから自分の執筆活動やブログ、SNSをチェックしていたらしいのです。かくいう自分も、エヂの日本デビュー盤『パーティー・マニュアル VOL.1』(97年)の担当ディレクターが友人だったことから、彼のアルバムを早くに聴いていて、〈ブラジルにも好きモノの面白いヤツがいるんだな〉と。インコグニートとの来日などは情報として知っていたものの、しばらくニュースが途絶えていたので、この直のメッセージにはビックリ。でも届いたCDを聴いて、スティーリー・ダンにリスペクトを示した内容とクオリティの高さに強い感銘を受け、時々メールで情報交換する間柄になリました。
デヴィッド・T・ウォーカーとの共演や、山下達郎“Windy Lady”の日本語カヴァーが話題になった2013年の再来日公演には、もちろん自分も足を運んでいます。すると、ステージに上がる直前のエヂが目ざとく自分を発見し、「トシか!?」と巨漢で包むようなビッグ・ハグ。ステージ上からも「今日は日本のAOR Samurai、トシ・カナザワが来てる」と紹介される始末で……。終演後はバックステージでマニア話に花が咲き、翌日だったか翌々日だったか、もう一回ブルーノートへ。ちょうど発刊間際だった著者監修ディスクガイド「Light Mellow 和モノ Special」をお土産に手渡しました。海外でシティポップに火が付く数年前、ベストセラーを記録するそのディスクガイドを手にした最初の外国人は、実はエヂだったのです。
その後もず〜っと彼のCD解説に指名され、今回の新作『Behind The Tea Chronicles』のライナーも担当。個人的にはどうしても『AOR』への思い入れが強いけれど、新作も充分にエヂらしい濃厚仕上がりで大いに満足。今はこのアルバムを引っ提げての、10年ぶりの来日を心待ちにしています。スケジュールさえ合えば、エヂと一緒に中古レコード屋巡りにでも行きたいなぁ〜。
AOR、シティポップを中心に、ロック、ソウル、ジャズ・フュージョンなど、70〜80年代の都会派サウンドに愛情を注ぐ音楽ライター。CD解説や音楽専門誌への執筆の傍ら、邦・洋Light Mellowシリーズほか再発シリーズの監修、コンピレーションCDの選曲などを多数手掛けている。現在、ライフワークである洋楽AORのディスクガイド「AOR Light Mellow Premium」シリーズが進行中。ほぼ毎日更新のブログはhttp://lightmellow.livedoor.biz

栗本 斉
もう20年近く前のことだが、ブラジルのクリチバという美しくオシャレな街で彼のライヴを観た。とてもオシャレなクラブ風のライヴスポットで、DJがかけるレコードも踊っているお客さんもみんなオシャレだった。そんなオシャレ三昧のステージに突如おでこに汗を光らせながら登場したエヂ・モッタ! 最初は大丈夫なのか?と思ったが、凄腕のバンドをバックに歌い演奏する彼の音楽はグルーヴィーかつメロウ、そしてとことんオシャレだった。そして新作『Behind The Tea Chronicles』を聴けばわかる通り、いまだにオシャレな音楽を奏で続けているのがすごい。いつまでもオシャレを貫き通し、僕たちを心地好くオシャレ気分にしてほしいと思う。
音楽と旅のライター、選曲家。70年生まれ、大阪出身。レコード会社勤務時代より音楽ライターとして執筆活動を開始。退社後は2年間中南米を放浪、帰国後はフリーランスで雑誌やウェブでの執筆、ラジオや機内放送の構成選曲などを行う。開業直後のビルボードライブで約5年間ブッキングマネージャーを務めた後、再びフリーランスで活動。著書に「ブエノスアイレス 雑貨と文化の旅手帖」(毎日コミュニケーションズ)、「アルゼンチン音楽手帖」(DU BOOKS)、共著に「喫茶ロック」(ソニー・マガジンズ)、「Light Mellow 和モノ Special」(ラトルズ)などがある。2022年2月に上梓した「「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!」(星海社新書)が話題を呼び各メディアに出演。最新刊は2023年9月に発表した「「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!」(星海社新書)。 https://lit.link/hkurimoto

シンリズム
初めてEd Mottaを知ったのは名盤『AOR』から。
大抵この辺りのアーティストは父親が知っており、教えてもらって知るという事ばかりだったので自分で発見し嬉しかったのを覚えています。
洗練されたサウンドやアレンジ、一聴してすぐに夢中に。
“Simple Guy”“Smile”“1978”など今も変わらず大好きな曲ばかりで、特に“Smile”はキャッチーかつクールなベースラインに複雑なテンションが見えるホーンと〈いつかこんな曲を作ってみたい!〉と思う要素が詰め込まれた楽曲でした。
ニューアルバム『Behind The Tea Chronicles』は更にそのサウンドスケールが大きくなっており、1曲目“Newsroom Costumers”のストリングスと木琴の組み合わせが何とも印象的な楽曲から始まり最後まで隙の一切無い流石の名盤っぷり。
個人的には今作はギターソロが多いのも嬉しい。
João Oliveiraの名演が光る箇所が何度も出てきます。
Ed Mottaは僕にとって永遠の憧れであり、こうなりたい!をいくつも魅せてくれる音楽家です。
本名:新 理澄(シン リズム)。97年7月17日、兵庫県神戸市出身。高校1年生時に作りためた楽曲をSoundCloudに公開するとネット上で話題を呼んだ。2015年4月にリリースした7インチシングル“心理の森”が全国ラジオ33局でヘビーローテーション(パワープレイ)された。これまでに2枚のアルバム(CD)と数枚のシングル(アナログ盤)をリリース。ソロ作品以外にCMソングやラジオのジングル制作、楽曲提供や管弦楽編曲もこなす。ライブツアーでのサポートなど演奏でも積極的に活動中。