耳で聴いたピープル・トゥリー
シカゴをめぐる音楽の果実は、一本のトゥリーを生んだ

BLOOD,SWEAT & TEARS 『Blood, Sweat & Tears』 Columbia(1968)

シカゴの好敵手であり、レーベル仲間としてブラス・ロック人気を共に牽引したNYのバンド。少し遅れてデビューするプログレ寄りのシカゴに対し、同じくジェイムズ・ウィリアム・ガルシオが手掛けた本2作目はリズム&ブルース色濃厚。一言で〈ブラス・ロック〉と括っても、当然ながら個性はさまざまだ。 *赤瀧

 

DIRTY LOOPS 『Loopified』 Verve(2014)

ストックホルム出身のこの3人組は演奏スキルが非常に高く、幅広い音楽的素養を持ち、それらを武器にフュージョン的なセンスで80sの産業ロック風なサウンドもこなす。加えて、プロデュースを務めるのがデヴィッド・フォスターとくれば、否が応でもフル・ムーン移籍後のシカゴを思い出してしまうだろう。 *赤瀧

 

ROBIN THICKE 『Blurred Lines』 StarTrak/Interscope(2013)

R&Bに憧れ、ブラスを導入したポップな曲を歌う白人……という紹介文は、シカゴとロビン・シック双方に有効だ。両者は今年のグラミー賞のステージで共演し、ロビンの70sディスコな表題曲もシカゴの演奏と相性が良いことを証明。そういえば、本作収録の“The Good Life”はシカゴのバラードを彷彿とさせる。 *林

 

KENNY LOGGINS 『Nightwatch』 Columbia/ソニー(1978)

シカゴの現ドラマーであるトリスは、ケニーの黄金期を支えた人物です。特にロギンス&メッシーナ期の生音志向を捨て、ロックにドライヴしてみせた本作での貢献度は絶大。なお、後にドゥービー・ブラザーズも取り上げたケニーとマイケル・マクドナルドの共作曲を含むこのAOR名盤も、先頃リイシューされたばかり! *山西

 

ED MOTTA 『AOR』 Lab(2013)

 直球なタイトルから80年前後のシカゴとの共通点を見い出すことも可能だが……実際に本作で洒脱なグルーヴの醸成に貢献しているのは、AOR路線に向かいつつあった時期のシカゴをバックで支えたブラジル人パーカッション奏者、ラウジール・ジ・オリヴェイラだ。エヂの滑らかな歌声もロバート・ラム似!? *林

 

Negicco 『Negicco 2003~2012 -BEST-』 T-Palette(2012)

本作収録曲“圧倒的なスタイル”の元ネタは“Saturday In The Park”。心浮き立つあのイントロをハウシーに調理し、さらなる爽快感をゲットしたのだからアッパレですね。なお、曲調はまったく関係ないけど、彼女たちは昨年“愛のタワー・オブ・ラヴ”なんて曲も発表し、シカゴ世代の心をくすぐったりも!? *山西

 

DE LA SOUL 『De La Soul Is Dead』 Tommy Boy(1991)

“Saturday In The Park”使いでもうひとつ外せないのが、本作で聴ける“A Roller Skating Jam Named Saturdays”。DEXPISTOLSもカヴァーしたこのヒップホップ古典は、歌い出しの〈サ~タデ~〉を執拗に挿みながらタワー・オブ・パワーのドラム・ブレイクを敷くという小技を使って、土曜の開放感を演出。 *山西

 

EARTH WIND & FIRE 『I Am』 ARC/Columbia(1979)

 70年代中期、シカゴの後を追うようにジェイムズ・ガルシオのカリブー・ランチで録音したEW&F。コロムビア所属のブラス入り大所帯バンドの後輩にもあたるが、デヴィッド・フォスターを迎えてAOR的な洗練を身につけたのは彼らが先。この後、本作に参加したビル・チャンプリンが、その作法をシカゴに持ち込む。 *林

 

MAROON 5 『Songs About Jane』 Octone(2002)

彼らの名を世に広めた“Sunday Morning”は、“Saturday In The Park”に並ぶ週末賛歌のクラシックで……と話を繋げるのはいささか強引かもしれないが、大衆性が高く、大人向けの(ここ重要!)ロックを鳴らすマルーン5を、シカゴ・チルドレンの筆頭として推薦したい。ソウルへの距離感とか……どう!? *赤瀧

 

TOTO 『Toto IV』 Columbia(1982)

歴代シンガーらによるツアー〈Voice Of AOR〉も記憶に新しい両バンドですが、初顔合わせは本作収録の“Rosanna”。その録音現場で、「なぜ落ち目のシカゴを使うんだ?」的な陰口を耳にしたパンコウは、このままじゃダメだ!と思い、即フォスターに制作を依頼したんだとか。シカゴの真の救世主はTOTOかもね。 *山西

 

THE BEATLES 『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』 Apple/EMI(1967)

66年作『Revolver』でトランペットなどを導入し、ブラス・ロックを先駆けたビートルズ。シカゴの面々も彼らからの影響を公言し、特にオーケストラのようにホーンを配置した本作には強く感銘を受けたそう。そして、その試みを曲単位でなくバンド単位でやろうというアイデアが、バンドを成功へと導くことに。 *赤瀧

 

JAMAICA 『Ventura』 Ctrl Frk(2014)

シカゴはもちろん、ボストンやカンサスなど地名を冠した偉大なバンドに敬意を表し、ジャマイカと名乗るようになったフランスの2人組。この2作目ではLA録音を敢行し、70sの西海岸ロックみたいな鳴りを意識したそうで、“Rushmore”での小気味良いリズム&乾いたギター音などは、初~中期のシカゴにも通じる。 *赤瀧

 

DESTROYER 『Kaputt』 Dead Oceans(2011)

トロ・イ・モワやアリエル・ピンクを筆頭に、AOR感覚を打ち出すことが一種のトレンドとなっている現行インディー・シーン。なかでも比較的早い段階からそれを実践してきたこのユニットは、サックスなどを表に出した分厚い音作りが特徴的で、シカゴ好きにも受け入れられそうな雰囲気があります。 *山西

 

AZ YET 『Az Yet』 LaFace(1996)

フィリー出身のR&Bヴォーカル・グループによるポップ・チャート最高記録(全米8位)が、“Hard To Say I'm Sorry”のカヴァーだという事実には本家もご満悦か。というか、ヒットしたのは、原曲を制作したデヴィッド・フォスターによるリミックスでピーター・セテラの声を交えたもの。そりゃ話題になりますね。 *林

 

FOO FIGHTERS 『Echoes, Silence, Patience & Grace』 RCA(2007)

長生きの秘訣はしっかりしたボトムにあり!と、リズム隊を入れ替えながら若々しさをキープし続けるシカゴ。近年では、フーファイの準メンバーとして彼らのアコースティック戦略を手助けし、ミー・ファースト&ザ・ギミ・ギミズの新作にも参加しているパーカッション奏者を引き抜いていましたっけ! *山西