ビートルズが世界的成功を収め、事実上の解散を迎えた70年代初頭、アメリカではダリル・ホール&ジョン・オーツがデビューを果たした。苦難を乗り越え、今や〈世界で最も成功したポップデュオ〉と称されるまでになった2人の音楽は、デビューから50年以上経た現在も多くのリスナーとアーテイストを魅了し続けている。
この11月には、ダリル・ホールがトッド・ラングレンと共に来日公演を開催することも大きな話題となっているなか、Mikikiでは〈ダリル・ホール&ジョン・オーツの色褪せない名曲〉というテーマの企画を立案。「シティ・ソウル ディスクガイド」などを手がけ、ライターほか多岐にわたり活躍する小渕晃に選曲/解説をお願いした。
本稿では、半世紀以上にわたる2人の膨大なディスコグラフィーから、主に絶頂期からのヒット曲を中心にチョイスしている。もちろん2000年以降の作品やダリル・ホールのソロワークにも数々の名曲は存在する。そんな数多あるダリル・ホール&ジョン・オーツの名曲を探求する旅の入り口として、このコラムを受け取っていただければ幸いだ。 *Mikiki編集部
“Sara Smile”(75年作『Daryl Hall & John Oates』収録)
72年の初アルバムから3年、レコード会社をRCAに移籍して出した4作目のアルバムからようやく生まれた記念すべき初ヒット。全米チャートで4位を記録した。ダリルの公私にわたるパートナーだった、サラ・アレンのことを歌った切なくも甘いラブソングだ。
“She’s Gone”(73年作『Abandoned Luncheonette』収録)
73年の初リリース時は全米60位に終わるも、“Sara Smile”のヒットを受けて76年に再度シングルリリースされると全米7位のヒットに。フィラデルフィア(近郊)育ちのダリルと、そのフィリーに移住してきたジョンのソウル/R&Bルーツも色濃いバラードで、ダリルは度々、ジョンとソングライトしたものではこれがベストソングと発言している。74年にはソウルグループ、タヴァレスがカバーしソウルチャート1位を獲得したこの名曲は、米「Rolling Stone」誌が選ぶ〈500 Greatest Songs of All Time〉で336位にランクされたこともある。
“Rich Girl”(76年作『Bigger Than Both Of Us』収録)
初の全米No.1ヒット(2週連続でチャート1位を記録)。風刺の効いた歌詞と、それを軽快に聴かせる曲づくりのうまさが特に表れた曲で、あのニーナ・シモンにもカバーされた。裕福な親を持つ〈お嬢さま〉についてニヒルに歌ったものだが、実際のモデルはサラ・アレンの知人である男性だった。