持ち前の大衆性と徐々に顔を見せる作家性――Vaundyの歩みを辿る9作
シティ・ポップやローファイ・ビーツを求める時代の需要に応えつつ、ロックな“怪獣の花唄”などで作家性を提示した初アルバム。〈何も持っていないが、何でもできる〉という若者特有なフィーリングが広がる“life hack”は、この地点ならではの名曲だ。
超特急のヴォーカリストによるソロ・デビュー作。堂島孝平やShe Her Her Hersのタカハシらが持ち味を出しつつ、Vaundyはストリングスが爽快な“Sorrow”でポップセンスを発揮。みずからの楽曲ではあまり見せない路線ゆえ、貴重な存在の一曲では。

拠点をLAに移し、キャリア第2章の幕上げを告げた2枚組全19曲の大作だが、そのフィナーレを飾ったのはVaundyを迎えた“ASH”。ファットなドラムの鳴りが気持ち良すぎるエレクトロ・ポップだ。ヨルシカのn-bunaによる同曲のリミックスも収録。
Vaundyを招いたファンク・ポップ“地球儀”を収録している6作目。重厚かつ厳かなサウンドを得意としてきた主役が、この曲では、軽やかで朗らかな歌唱と共に新しい表情を見せている。こののち両者がコラボした“おもかげ”を引っ提げ、紅白で共演を果たした。
伸びやかな歌声を持つシンガーによる2作目。アンセミックなロックからダンス・ポップまで、川谷絵音やDURDNらが手掛ける多彩なサウンドを揃えた同作に、Vaundyは“くびったけ”を提供。歯切れのいいビート・パンクで、快活な魅力を引き出している。
2022年にVaundyが菅田に提供した“惑う糸”は、独特な湿り気のあるファンク・ポップで、主役特有の冷めた目線と秘めたる熱が同居している歌声にマッチ。まだ音盤としてはパッケージ化されていないが、こちらの作品でライヴ・パフォーマンスを観ることができる。
映画「ONE PIECE FILM RED」でウタの歌唱を担当したAdoが、ウタとしてアルバムを完成。“新時代”を手掛けた中田ヤスタカを筆頭に多くの音楽家が参加するなか、Vaundyはポスト・パンク調の“逆光”を作詞作曲。好相性を見せ、今年は“いばら”をコラボ。
前年リリースの初アルバムでの共作に、彼女たちも手応えを感じていたのだろう。この最新EPでもVaundyをフィーチャーした“rose”を収録。濃厚なグルーヴの渦巻くファンクから、バンド・アンサンブルのかっこよさが伝わってくる。
昨年に配信で発表されたトリビュート盤がこのたびCD化。My Hair is BadからBiSHまでエルレに思い入れのある7組のグッとくる好演が揃うなか、Vaundyは“Missing”に挑戦。構成や節回しは原曲に忠実ながら、鮮やかなストリングスを追加。エモい……!