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偶然の縁こそすごく大切

――今回の再録音は金延さん側からの発案だったんですか?

「麻琴ちゃんのアイデアです。何かのきっかけで麻琴ちゃんが『Fork in the Road』を聴き返す機会があったみたいで、〈とてもいい内容だし、これを埋もれたままにしておくのはもったいない〉と思ったらしくて、〈さっちゃん、僕に遊ばせてくれない?〉と提案してくれたんです。それで、伊藤大地さんやASA-CHANGさんに声をかけて、早速セッションしてくれたのね。今度は私がそれを聴いて、〈スティーヴたちも参加させたらおもしろいんじゃない?〉って言って、どんどんメンバーが集まっていったんです」

――実際の録音作業は久保田さんにお任せですか?

「100%お任せでした。今作の新装盤にもボーナス・トラックとして収録されているけど、麻琴ちゃんには、84年に“み空”の新ヴァージョンを作ってもらったことがあるんです。それが、〈こんなふうに生まれ変わるんだ!〉っていう驚きの内容で。昔から彼のセンスを信頼しているから、今回も彼にお任せしました」

――新しく出来上がった『Fork in the Road』を聴いてみての感想は、いかがでしたか?

「すごく新鮮! いちばんのお気に入りは“Dreamer”です。幾何学模様の(黒沢)隆ちゃんの素敵なシタールから始まって、テープの逆回転が入ってきたり、これは麻琴ちゃんにしかできない世界だなと思いました。今回、クルアンビンのポスターなども手掛けられているインドネシアのイラストレーター、ケンドラ・アヒムサにジャケットを新しく描き下ろしてもらったんですけど、アルバム全体の音も彼の絵のようにカラフルな音になったと思います。古いのか新しいのかよくわからない、変わったものが出来上がりましたね」

――久保田さんらしい民族音楽~非西欧的な音楽の要素も素晴らしいですね。

「そうそう。パーカッションの入れ方とか、とても素敵」

――お話を伺ってみて、今回のアルバムを含め、金延さんの活動はいろいろな人たちの縁が取り持ってきたものなんだなというのがよくわかりました。

「その通りです。デビューできたのも、ポールやフィリップと知り合ったのも、音楽を続けていろんなミュージシャンと知り合うことになったのも全部そう。私にとって偶然の縁というのは、すごく大切なものなんです」

左から、カーウィン・エリス&リオ18の2021年作『Mas』(Banana & Louie)、幾何学模様の2022年作『クモヨ島』(Guruguru Brain)

左から、伊藤大地を擁するグッドラックヘイワの2017年作『Lm』、ASA-CHANG&エマーソン北村の2020年作『エロス』(AIRPLANE)、久保田麻琴がミックス&マスタリングを手掛けた裸のラリーズのライヴ盤『BAUS '93』(The Last One Musique/Tuff Beats)