東京発のエクスペリメンタル・ソウルバンドWONKが、2年ぶりのフルアルバム『Shades of』をリリースした。
コロナ禍に制作された前作『artless』は、メンバー4人で音楽を作ることに焦点をあてたオーガニックなサウンドを特徴とした作品だったが、今作はKendrick LamarやRobert Glasperとも共演するBilal、Slum VillageのラッパーT3、キーボーディストのKieferといった彼らが敬愛するソウル、ヒップホップの第一線を行くアーティストや、韓国ヒップホップの雄BewhY、日本からは久保田利伸、Jinmenusagiなど多くのコラボレーターを迎え、彼らの原点とも言える、エクスペリメンタルなソウルへと向かった。
活動開始10周年を経て、自身のアルバムでも作品ごとに様々な音楽性を見せ、様々なアーティストへの楽曲提供なども経験したら彼ら。経験を重ねたからこそ、今作は〈売れなくてもいい〉という気持ちにたどり着いたと話す。リーダーでドラマーの荒田洸とボーカリストの長塚健斗に話を聞いた。
※このインタビューは2024年11月25日(月)発行の「bounce vol.492」に掲載される記事の拡大版です
何がWONKなのか?
――まず、今作のコンセプトについて教えてください。
荒田洸「〈いろんな側面がありすぎて、複合的すぎてまとまりづらい〉っていうのが、そのまま今作のコンセプトだったかなと(笑)。タイトルに含まれている〈Shades〉には虚像と実像とかそういう意味もありますし。
これまで活動してきて、リスナーが抱いているWONK像と、僕らが思っているWONK像は違うと思ったんです。そして僕らの思うWONK像も、メンバー4人それぞれで多分ちょっと違う。その色々なWONK像の〈ずれ〉を1つの作品に落とし込むことで、WONKたりうるのかなと。だからアルバムジャケットの写真もみんなの姿がブレていて、でもそれが1つの枠の中に入っていることに意味がある。それぞれにいろんな見え方はあるけど、1つの作品をみんなで作るってことがWONKなのかなと思っています」
長塚健斗「人って、出会う相手とか環境、当たる光の角度で見え方や印象が変わると思うんですよね。 バンドもそれと同じだなって思っていて。1つのライトに対して、1つのシャドウがあるっていう関係性ではなくて、いろんな色合いや濃淡があるという意味で、〈Shades of〉ということですね」
――様々なWONK像って、具体的にはどんなWONK像があると思いますか?
荒田「リスナーに関して言うと、聴いている作品によって全然違うと思うんですよね。2016年に最初の『Sphere』ってアルバムを出した時と、2020年に『EYES』を出した時、そして『artless』を出した時で、僕らは音楽性も音色も全然違うんです」
長塚「僕らを昔から知っている人、最近ライブに来てくれている人、音源を聴いてくれている人、それぞれで違うと思いますね」
荒田「今回、先行シングルでもアルバムでも、ジャケットにアクリルで作った箱を使っているんですよ。我々はその箱を〈WONKくん〉と呼んでいるんですけど(笑)。シングル“Here I Am”のジャケットでは〈WONKくん〉を海に浮かべた写真を白黒反転させていて、“Life Like This”では草原に置いていて、アルバムジャケットにも実はうっすらこの箱が写っているんです。同じ箱だけど、周りの環境と照らすものによって見え方が違っている。今回の作品コンセプトをイメージに落とし込んだ部分なんです」
長塚「〈WONKくん〉っていう存在はおもろいよね。大体、ボーカルの顔がバンドの顔やイメージになるじゃないですか。でも我々にとってのそれは〈WONKくん〉なんだっていう(笑)。〈何がWONKなのか?〉っていう問いにつながっている気がします」