©Felix Broede

北欧の巨人シベリウスを聴く醍醐味を満喫! 期待の新鋭指揮者の鮮烈なデビュー盤

 2019年に若手指揮者の登竜門、ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝。一躍国際的な脚光を浴び、国内外のコンサートで旋風を巻き起こしている注目の指揮者、沖澤のどかが待望のCDデビュー。2021年10月に読売日本交響楽団に客演した際の東京芸術劇場でのライヴ録音、シベリウスの交響曲第2番である。

沖澤のどか, 読売日本交響楽団 『シベリウス:交響曲第2番』 コロムビア(2023)

 フィンランドの作曲家、シベリウス(1865~1957)は北欧の大自然が鳴り響くような個性あふれる交響曲を7曲残した。その中で第2番は美しい旋律と壮麗な景観をもち、作品はドラマティックに展開し、ラストは圧巻のファンファーレで輝かしく結ばれる、シベリウスの交響曲中最もポピュラーな作品である。それだけに数多くの名盤が存在するが、今回のCDはそれらに伍して十二分に存在意義を主張しうる名演、名録音となった。

 読売日本交響楽団の技量の高さ、豊かな音楽性、音色のコクと多彩さ、幅広い強弱のダイナミクス……。沖澤のどかは、こうした特性をフルに生かしながら、オーケストラから瑞々しい響きと淀みない音楽の流れを導き、同時に眼前の音像、全体の造形とも極めて雄大に描き出し、シベリウスを聴く醍醐味を満喫させてくれる。

 実際、演奏時間(47分20秒)も往年の巨匠チェリビダッケ(46分30秒)や朝比奈隆(45分40秒)より長い。これより長いのは晩年のバーンスタイン(51分30秒)くらいだが、彼女の場合、停滞感がまったく無く、音楽が自然に息づいているのが素晴らしい。それは、全体を見通した確かな演奏設計と、音楽への深い集中の賜物だろう。

 例えば第1楽章展開部4分45秒~での音量とテンポを落とした集中の深まり、シリアスな音色の翳り! そして巨大なクライマックスへ向けて膨張・発展してゆく凄まじさ! また、第2楽章のキリストを描いたと言われる第2主題直前5分30秒~の約10秒に及ぶ間(ま)にも思わず息をのむ。まさに音楽の向こうの精神世界まで到達した表現で、彼女の今後に大きな期待を抱かざるを得ない。

 


LIVE INFORMATION
シティフィル 第366回定期演奏会

2024年1月13日(土)東京オペラシティコンサートホール
開演:14:00

京都市交響楽団 第685回定期演奏会
2024年1月19日(金)京都コンサートホール大ホール
開演:19:30

京都市交響楽団 福山演奏会
2024年1月21日(日)ふくやま芸術文化ホールリーデンローズ大ホール
開演:16:00