2020年4月10日、2018年の東京国際音楽コンクール《指揮》と2019年の仏ブザンソン国際コンクールに優勝した新進指揮者、沖澤のどかが自身のフェイスブックに「国内オーケストラの支援先リンクを一覧にしてみました。こういう時には、自分の手で何かを支えているという実感に自分もまた支えられるはずです。どうぞご支援を!」と記し、全国約40のオーケストラの寄付金受け入れ窓口のURLを一斉に貼り付けた。日本オーケストラ連盟(オケ連)が〈オーケストラ音楽の存続のために〉と題した声明文を発表して4日後の早業だった。

 2月末以降、新型コロナウイルス対策で音楽イベントが中止・延期に追い込まれるなか、公演の入場料収入を断たれたオーケストラは存続の危機に瀕している。NHKのEテレは4月19日の「クラシック音楽館」で特別番組「いま届けたい音楽〜音楽家からのメッセージ〜」を放映、自主運営楽団の窮状も紹介し、全業務の一時休止に追い込まれた東京交響楽団の密着取材に多くの時間を割いた。メジャー楽団の多くは公益財団法人であり、〈正味財産が2年連続で300万円を割ると法的に強制解散〉という爆弾も抱えている。

 今年(2020年)はベートーヴェンの生誕250周年に当たるが前回のアニバーサリー、生誕200周年と大阪万博が重なった1970年まで世界的演奏家の来日は限られ、一部のお金持ちを除けば、クラシック音楽体験の第一歩は日本のオーケストラだった。〈育ててもらった〉恩に感謝したくても、〈すべての団体に寄付するほどの資金はない〉との困惑も音楽ファンは共有する。

 オケ連は4月24日、〈ご寄付のお願い〉としてホームページ上で共通の窓口を公開。沖澤も早速〈続報〉を書き込みに追加した。海外でもメトロポリタン歌劇場やフィレンツェ5月音楽祭劇場など有力オペラハウスの経営が傾いたのを受け、スター歌手が自宅で歌う場面をつなぐ〈アット・ホーム・ガラ〉の手法でファンドレイジングが本格化している。ホールや劇場で再び生の音楽を聴ける日の早期到来を願い、私たちにできることを今、実行しようと思う。