©Christoph Köstlin

ブルース・リウがラモー、アルカン、ラヴェルのフランス作品で個性を発揮

 2021年のショパン国際ピアノ・コンクールの覇者ブルース・リウは、コンクール直後の来日時のインタビューから「ラモーを弾きたい」と語っていた。フランスで生まれたこと、フランス・バロックに興味があること、クラヴサン奏者のレッスンを受けて奏法と表現に魅了されたことなどが理由に挙げられるという。そんな彼がラモー、ラヴェル、アルカンの録音を完成させた。

 「録音では、ピアノ技術者(調律師)のミシェル・ブランジェスが僕の右腕のような役割を果たしてくれました。ラモーはアーティキュレーションが明確に聴こえ、速いパッセージが楽に弾けるように、アルカンは2曲のコントラストがはっきり表現できるように、ラヴェルはハーモニクスが美しく響くよう、曲によって調律を工夫してくれたのです」

BRUCE LIU 『ウェイブス~フランス作品集』 Deutsche Grammophon/ユニバーサル(2023)

 ショパンやリストと同時代のシャルル=ヴァランタン・アルカンは、“舟歌”“イソップの饗宴”の2曲が選ばれている。

 「音楽配信サイトでアルカンを知り、超絶技巧の作品が多いことに驚き、興味が涌きました。“イソップの饗宴”は10分以上の長大な曲で技術的に難度が高く、華やかで激しい。一方、“舟歌”は静けさが全編を覆い、ミニマリスティックでフィリップ・グラスの曲のように感じられ、ポストロマン主義のようにも思えます。そのコントラストを表現したかったのです。これを機にアルカンという作曲家を知ってほしいですね」

 ずっと演奏したいと願っていたラモーは、「新クラヴサン組曲集」から“ガヴォットと6つのドゥーブル”と“未開人たち”が選ばれ、古典的で歌心に富む美しい響きを聴かせている。

 「ラモーは非常にバラエティに富んだ作品が多く、1曲のなかにいろんな要素が含まれている。僕はさまざまな文化のなかで生まれ育ち、常にアイデンティティを模索し、それが僕自身の音楽哲学を形成してきました。その意味で、バラエティ豊かなラモーの音楽に無性に惹かれるのです」

 ラヴェルの音楽に関しても、一家言をもつ。

 「パリ郊外のラヴェルが暮らした家を訪れ、完璧主義者だった彼の生きざまが理解でき、音楽に近づくことができました。ラヴェルは奏者が勝手にイメージを膨らませることなく楽譜通りに弾けば、論理も書法も伝わります。今回は組曲“鏡”を選びましたが、5曲ともキャラクターが独特なのでその違いを表現したつもりです。ラヴェルの完璧主義が描き出されていると良いのですが(笑)」

 


LIVE INFORMATION
ブルース・リウ来日公演2024/アンドレイ・ボレイコ指揮 ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

2024年2月4日(日)ザ・シンフォニーホール
2024年2月5日(月)アクロス福岡 福岡シンフォニーホール
2024年2月7日(水)サントリーホール
2024年2月11日(日・祝)横浜 みなとみらいホール
https://www.japanarts.co.jp/artist/bruceliu/