10月25日と26日、オアシスの再結成ツアー〈live ’25〉の日本公演が東京ドームで開催された。惜しくもチケットを手に入れられなかった人たちは会場の外で音漏れという形でライブを楽しむほど、オアシスファンにとって、また全ロックリスナーにとってもこの2日間はかけがえない時間となった。
そんな空前絶後のライブを現地で直接見ることができたbounce編集部員とMikiki編集部員がいた。変な建前はいっさいなし。お互い純粋なオーディエンスの1人として、あの日オアシスが生み出した熱狂について語り尽くした。
〈これぞオアシス!〉というライブを東京ドームで体験
小田淳治(Mikiki編集部)「16年ぶりのオアシスの来日ライブ、今年イチ記憶に残るものになりましたね。正直どこから話せばいいのか……むしろ東京ドームに向かう道中から会場を出るまでの一部始終を語りたいぐらいで。田中さんは2日間ともご覧になったそうですが、いかがでしたか?」
田中亮太(bounce編集部)「僕は1日目をS席のスタンド、2日目はVIP席のアリーナで観ました。いずれも義理の兄と。義兄弟と兄弟を見に行くという(笑)。特にVIPは前から5列目という引きの強さでしたので、肉眼でメンバーの細かな挙動がわかりましたし、音響的にもすごく良かったです。トリプルギターのサウンドの厚みを全身で浴びることができました」
小田「2日目はまさに目の前でオアシスをご覧になったんですね! 自分は2日目の公演を1塁側のS席で見ましたが、今回は本当に音響の良さに驚きました。現地で見た人の多くが〈東京ドームなのに音が良い!〉とSNSで呟いていましたが、スピーカー自体の進化や出音の良さはもちろん、ここまでスタジアム規模の会場で彼らのライブの音を作ってきたPAクルーの経験もあってこその成果だと思ってます。
ちなみに両日とも見たからこそわかることも多いと思いますが、やはりVIP席で見た日の方が良かったんですか?」
田中「いや、〈これぞオアシスのライブ!〉って体験をできたのは、実はS席のほうなんです。ちょうど真後ろがバルコニー席だったんですが、そこにいたグループがめちゃくちゃパリピ集団で。ライブの頭から最後、なんならオープニングアクトのアジカンのときから、ものすごい盛り上がりで大合唱をしていたんですが、それが周りにも伝播して、界隈全体の雰囲気が昂揚感に溢れていて。僕らもときおり後ろを見て、一緒に歌ったり、肩を抱き合ったりしていたら、途中から無限にワインを注いでくれるようになりました(笑)。あのときの人たち、ありがとう!」
小田「まさにオアシスならではのライブ体験ですね(笑)。自分の周りはそこまで盛り上がっていた人はいなかったですけど、とにかく若いリスナーが多かったのが印象的でした。明らかにバンドが解散してから好きになった人たちがたくさんいて、そういうフレッシュなエネルギーが今回の再結成ツアーを特別なものにしているんだなと、肌で実感できました。

あと、自分は2009年のフジロックでのライブも見ているんですが、ノエルとリアム、そして日本のファンにとってこの16年は決して無駄ではなかった、むしろこの感動を得るために必要な時間だったんだなと、改めてライブを見て思いました。“Fuckin’ In The Bushes”のイントロが流れた瞬間にすべてが報われたような、ちょっと言葉では言い表せない感情でライブを見ていましたね」
田中「僕は、オアシスに夢中だったのは1995年から1997年までで、それ以降はあまり熱心なリスナーではなかったんです。若いときはフジロックやサマソニにもそんなに行かない音楽生活を送っていたので、それ以降フェスなどでも見る機会がなくて。なので、実は解散以前にライブを見たのは1回のみ。しかも2000年の伝説の福岡公演(笑)」
小田「リアムが5曲目くらいでいなくなったという伝説のライブですね! 現地で実際に体験した人を前にして言う言葉じゃないかもしれませんが、めちゃくちゃ羨ましいです(笑)。そういった語り草になるトピックって意外と日本で多い気がします。それだけオアシスと日本とが深い関係を築いているという証拠でもありますが」
リアムとノエルのソロでの成功がなければ再結成はなかった
小田「田中さんはバンドが解散して以降も、リアムやノエルのソロワークにおいて色々とテキストを書かれていますよね。改めてギャラガー兄弟のソロ活動は再結成にいたるまで重要な期間だったと思いますか?」
田中「めちゃくちゃ重要だったと思います! というか、ソロでの成功なくして再結成はなかったんじゃないかな。(ノエル・ギャラガーズ・)ハイ・フライング・バーズでオアシス以上に自身の趣味性を出しつつ、カラフルな音楽的好奇心を反映させた作品を作ってきたノエルに惚れ直したというのもありますが、やはりリアムですね。オアシスの解散以降、ここでは割愛しますが、いろいろあってどん底まで落ちたリアムがソロシンガーとして復活していく様には心を動かされっぱなしでした。
ソロ作品の商業的/批評的な成功、優れたソロバンドの確立、フェスなどでの若い世代からの支持、MTVアンプラグドやネブワース……リアムのソロキャリアを振り返ると、彼がオアシスを越えていくストーリーとして読めると思うんです」
小田「〈オアシスを越えていくストーリー〉……本当にその通りですね。いまのリアムへと繋がる軌跡は、ドキュメンタリー映画の『リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ』でチェックできますが、酒もタバコもやめて、街中をランニングするリアムの姿を最初見たときは、実はちょっと受け入れられない自分もいましたが(笑)。でも、もう修復不可能と思われたノエルとの関係に一番影響を与えたのは、リアムのボーカリストとしての復活であることは間違いないですよね。それは今回の東京ドーム公演でも感じました」