菊池洋子――ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲のライヴ録音開始
ウィーン在住の菊池洋子が子どものころから目標とし、夢見ていたベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲録音についに着手。これは全曲を3年間かけてライヴ録音するプロジェクトで、共演は山下一史指揮大阪交響楽団。その第1弾である第3番と第4番がリリースされた。
「これまでモーツァルトのピアノ・ソナタ、ピアノ協奏曲などの録音を行ってきましたが、いつかベートーヴェンのピアノ協奏曲を全曲演奏したいと願っていました。それが実現可能となり、3年かけてじっくり取り組むことになります。まず、2023年9月9日ザ・シンフォニーホールで第3番と第4番をライヴ収録しました。通常はライヴ収録といってもリハーサルやゲネプロを録っておき、本番では精神的に落ち着いて演奏できますが、今回は昼夜2公演をそのまま録音する形で、極度の緊張感を抱きました」
最初の演奏の方が緊張し、2回目の方が多少落ち着いた感じになると考えたが、録音された音を聴くと、最初の演奏の方がフレッシュで勢いがある感じに収録されていたという。
「枠にはまった感じがまったくなく、前に進む力がみなぎっています。不思議ですよね。最初の演奏は少しテンポが速く、走り過ぎたかなと思い、夜の公演ではそれを修正したのですが、最初の方がよかったのですから」
今回は各曲のカデンツァもさまざまなものを考慮し、工夫を凝らしている。
「第3番は恩師の田中希代子先生が第1楽章だけライヴ録音を残され、ライネッケのカデンツァを演奏されていますので、先生の遺志を継ぐ意味でライネッケを弾いています。あまり演奏される機会のないカデンツァですので貴重だと思います。第4番の第1楽章はベートーヴェンの3種類あるカデンツァのもっとも長い100小節を選びました。第3楽章ではブラームスのカデンツァを弾いています。家で練習しているときはブラームスの重厚感がなかなか出なかったのですが、本番でオーケストラと合わせたときに、ああ、ブラームスの響きだという感覚が蘇り、自分で感動してしまいました(笑)」
昨春よりウィーン国立音楽大学で後進の指導にあたり、ウィーン・フィルのライナー・ホーネックとのデュオも行う。それらすべてが菊池洋子の音楽を肉厚なものとし、深みを増す。次なる録音は大好きなバレエ音楽に関するものを予定している。夢はより大きく、広がりを見せていく。
LIVE INFORMATION
ガルガンチュア音楽祭2024 ガラコンサート
2024年4月28日(日)石川・北國新聞赤羽ホール
開演:17:00
ガルガンチュア音楽祭2024 菊池洋子&アビゲイル・ヤングの室内楽
2024年5月3日(金)石川・金沢市アートホール
開演:13:10
ガルガンチュア音楽祭2024 菊池洋子のモーツァルト
2024年5月4日(土)石川県立音楽堂 邦楽ホール
開演:18:30
菊池洋子ピアノ・リサイタル
2024年5月11日(土)東京・澤柳記念講堂
開演:15:00
菊池洋子 公式サイト:https://yokokikuchipf.com/