昨年10月に突如として配信リリースされた9枚目のオリジナル・アルバムがフィジカル化。これまで作品の端々に影響と憧憬を覗かせていたブラジル音楽やソウル、フォークなどの諸要素をよりシームレスに昇華した印象で、独自の手つきでエクレクティックに紡いだ落ち着いた佇まいの楽曲を、20曲75分に渡って展開している。技巧を凝らしたソングライティングを楽曲ごとに多様なプレイヤーを迎えた贅沢なアンサンブルで鳴らしながら、聴き手を圧倒する雰囲気のない親密な音像に結実させるというバランス感覚も彼ららしく見事。喧騒を離れて己が道を行かんとする3人の姿を映した静謐かつ濃密な作品だ。