Love City 2015
[ 特集 ]都市インディーの源流
音楽の聴かれ方、表現の仕方が大きく変化した90年代。その幸福な時代を起点に、多様化する〈街の音楽〉など現在の日本のインディー界隈の源流を紐解いてみよう
AIR GROOVE
〈渋谷系〉ムーヴメントにおいて再評価された60~70年代のソフト・ロックやブラジル音楽、さらにはフュージョンやニューミュージックを匠の技で自身の音楽へと変換するマエストロたち。彼らの手によるアダルトでグルーヴィーなポップソングは、FMラジオ越しに街の風景を爽快に彩って……。
滋味深くウィットに富んだ歌詞、スティーリー・ダンあたりに通じる洗練とウェストコースト・ロック的な長閑さを併せ持ったバンド・グルーヴ。玄人好みのものでもありながら、昼下がりのひとときや初夏のドライヴなど、日常的な楽しみごとに華を添えるぐらいの接し方も全然アリな人懐っこさが、彼らの人徳。 *久保田
AORやジャズ、ファンクのみならず、幅広い音楽を好み、学生時代からバンドマン。〈グルーヴ〉には人一倍こだわりのある方ですが、それと共にこの初作から現在までの作品で際立っているのは、日本語の響きを大切にした情感豊かなメロディーと、イージー・リスニングにも通じるエレガントなサウンドメイク。 *久保田
2003年以来、ニューミュージックやAOR、ブラジル音楽への憧憬を作品に転化してきた3人組の最新作は、北園みなみらの参加もあって過去最高の奥行きと洗練を獲得した一枚に。回顧主義に臆することも軸を変えることもなく真摯に掘り下げ続けたサウンドは、気付けば他の追随を許さぬ領域に到達している。 *澤田
SoundCloudで公開した楽曲で知名度を高めたシンガー・ソングライター。ジャズ~ブラジル音楽ベースのフュージョンAORが並ぶ初ミニ作は、もはやプログレ級の凝ったコード進行と、弦楽隊も含む生音の丁寧なレイヤーで構築された洗練ポップ集だ。その後は花澤香菜やNegicco作品でもその職人技を披露している。 *土田
2002年のデビューから、バンド編成だった2006年までの代表曲を収めたベスト盤。大滝詠一似の歌声然り、60~70年代ロック/ポップスを再解釈したはっぴいえんど直系のサウンドは、喫茶店の窓越しに見る街のざわめきを音に写し取ったよう。FMでパワープレイされた“春雨道中”を筆頭に、いまも新鮮な輝きが。 *土田
benzoの平泉光司を中心に、シアターブルックの中條卓、オリラブでも叩いていた小島徹也というロマンティックな優男たち。持ち前のソウル・フィールで包む“すべての光を”、饒舌メロウな“胸の奥に”、陽光で目覚めるようなディスコ“AWAKE”と、いい気分の絶えない楽曲揃い。まさしく、ソファじゃなくカウチ。 *出嶌
2003年に発表した初作のタイトルはズバリ『シティ・ミュージック』でしたが、AORやブラコンに由来する80年代のシティー・ポップ・フィーリングを再解釈するアーティストも、当時は物珍しかったもの。続いての本作で全面フィーチャーされている無名シンガー、江口ニカの正体は一十三十一。実にラヴい。 *久保田
シティー・ガールの代表格が〈もう一度、街へ憧れよう〉と80sへ目を向けた4作目は、当時の化粧品のCMを思わせるヴィジュアルや言語感覚はもちろん、カーステレオが似合う煌びやかな音世界にウキウキ! 自身名義でもラテン風味をまぶした爽快なドライヴ音楽を残す編曲者、川口大輔の貢献ぶりにも注目したい。 *土田
ニューウェイヴ~オルタナを通過したA&M系というか……ピチカート×フリッパーズとも言えそうな、洒脱さのなかに挑発的なサイケデリック感覚も備えたクールなソフト・ロックを鳴らす2人組。コラージュ・ポップ的に複雑な構成ながらキャッチーという意味では、北園みなみやblue marbleらと並ぶ逸材かと。 *土田