2024年6月21日に東京・渋谷のNHKホールで開催された〈JAZZ NOT ONLY JAZZ〉。当代随一のジャズドラマー・石若駿がスペシャルバンドを結成し、世代やジャンルを豪華なゲストとこの日限りの特別な演奏を繰り広げた。同日の模様を捉えたオフィシャルレポートが届いている。 *Mikiki編集部

音楽評論家でDJとしても定評のある柳樂光隆によるDJを経て、開演時刻を過ぎると石若率いるThe Shun Ishiwaka Septetがステージに登場。この日は各ゲストとの演奏に加えて、間にはジャズスタンダードも演奏され、1曲目に選ばれたのはジョン・コ
ルトレーンの“A Love Supreme”。西田修大(ギター)、細井徳太郎(ギター)、マーティ・ホロベック(ベース)、松丸契(サックス)、山田丈造(トランペット)、渡辺翔太(ピアノ)というメンバーはそれぞれが多方面で活躍しつつ、普段から石若と演奏する機会も多いプレイヤーたち。現在31歳の石若をはじめ、平均年齢は30代の前半。“A Love Supreme”に2020年代ならではの解釈を加え、フレッシュかつエネルギッシュに演奏された。

ここで最初のゲスト・堀込泰行が呼び込まれると、演奏されたのはキリンジの“エイリアンズ”。ライブ序盤でいきなり披露された名曲に大きな歓声が上がる中、堀込がリリース当時と変わらない透明感のある歌声を響かせ、さらにはドナルド・フェイゲン風
のAORナンバー“New Day”で会場を盛り上げていく。石若が「思い入れの強い“エイリアンズ”を最初に演奏できて、今日は幸先がいい」と話し、バンドメンバーを紹介すると、続いて披露されたのは“Sunday in the park”。堀込は以前から下の世代と積極的にコラボレーションを行なっていて、この曲は星野源との活動でも知られるMPCプレイヤーのSTUTSとのコラボレーション。STUTSもまた近年ジャズに傾倒した活動を行い、この曲からもジャズの広がりが感じられ、ステージ上では細井が長尺のギターソロで色を添えた。

続いて登場したのはOriginal Loveの田島貴男。石若が「念願の初共演です」と話し、田島は石若について、「中村佳穂さんのライブで見て、これはやばいと思いました」と話すと、まず披露されたのはジャズスタンダードの“Body and Soul”。ハリのある
歌声でスタンダードを自らのものにして歌い上げ、軽快なギターソロも聴かせる田島の存在感はやはり抜群だ。マーティが躍動感のあるウォーキングベースを聴かせた“bless You!”では西田、細井、マーティとソロを回し、最後に石若がパワフルなソロを聴かせると、田島が「Clap your hands!」と場内に呼びかけ、手拍子の輪が広がっていく。その中心で熱量高くシャウトを決める田島の千両役者ぶりは流石の一言だった。

さらにはブギーな“グッディガール”を続けると、曲の途中からラッパーのPUNPEEが登場して、こちらも巧みなステージングでオーディエンスを巻き込み、パーティーな空気を作り上げていく。この曲が終わって田島がステージから去ると、PUNPEEは「ジェイ・Zとザ・ルーツが一緒にやったアンプラグドのアルバムが好きで、今日はあの感じでやれるのが嬉しい」と話して、ファンキーな“Renaissance”でさらに場内を盛り上げた。2010年代以降のジャズにおいてヒップホップとの融合は外せないトピックであり、ザ・ルーツのドラマーであるクエストラヴがその文脈においてとても重要であることも踏まえ、PUNPEEはこのイベントに欠かせないピースだったと言える。

ここで再びジョン・コルトレーンのナンバーから“Naima”がスピリチュアルな雰囲気で演奏されると、続いて呼び込まれたゲストはアイナ・ジ・エンド。アイナが20歳のときに作ったというスタンダード感のあるポップス“スイカ”を、あの喉をギュッと締
めるような独特の歌唱で堂々と歌い上げ、そのアイコン性の高さはここまで登場したゲストたちにも全く引けを取らないもの。アイナの楽曲に参加している西田も交えて思い出を語り合うと、続いて披露されたのは岡村靖幸のプロデュースで、石若がレコーディングにも参加しているバラードナンバー“私の真心”。渡辺のピアノソロから始まったこの曲で、アイナはまずピアノの前に座り込んで歌い、さらにバンド全体の演奏が加わると、軽やかにステップを踏んだり、激しくダンスをしたり、ときにはステージに横たわったりと、まるでミュージカルを見ているかのような奔放なパフォーマンスで観客を魅了。途中で挿入される松丸のサックスソロも艶があり、イベント全体の中でも特筆すべき名演だった。

2024年8月16日(金)にこのイベントの配信が決まり、その日は石若とビル・エヴァンスの誕生日であること、9月にはWOWOWでも放送・配信されること、さらには各メンバーと石若とのエピソードが語られると、続いて登場したゲストは大橋トリオ。ピアニカを用いたイントロからして印象的な“鳥のように”を歌い始めると、その清涼感のある歌声で場内に心地いい風を吹き込んでいく。かと思えば次に演奏されたのは大橋トリオのレパートリーの中でもロック色の強い“マチルダ”で、メンバーがソロを回したり、客席にクラップを求めたりと、アグレッシブなパフォーマンスも魅力的だ。MCで大橋は石若について「これは石若駿と同じステージに立って演奏しないとわからないと思うんですけど、すごくやりやすいんですよ。ここにミュージシャンを目指してる人がいたら、それを目標に頑張ってほしい」と話し、“EMERALD”ではこの言葉通りに石若のリズムに体を委ねて歌声を聴かせた。山田のトランペットソロも素晴らしかった。

ここで一度メンバーが全員ステージからはけて、運び込まれたグランドピアノに客席がザワザワとどよめく中、石若とマーティ、そしてこの日最後のゲストである上原ひろみが登場。ピアノトリオ編成で披露されたのは、2003年に発表された上原のファーストアルバム『Another Mind』の1曲目を飾る“XYZ”だ。プログレッシブな構成の中で上原がスキルフルかつダイナミックなプレイでアンサンブルをリードし、それに負けじとマーティや石若もソロを聴かせるセッションは実にスリリング。やはり2000年代においては上原ひろみこそが日本とアメリカを繋げ、ジャズの更新と拡張に大きく寄与し、その後に石若たちの世代が続いていることが改めて感じられる。さらには3人に西田が加わって、最後に演奏されたのは“Return of Kung Fu World Champion”。シンセをフィーチャーしたこの曲で4人が再び手に汗握るセッションを聴かせると、後半では西田がピアノに近寄って、上原と熱量高くインプロの応酬で魅せたのもこの日随一の名シーン。圧巻の演奏に場内からはスタンディングオベーションが贈られ、本編が締めくくられた。

アンコールではThe Shun Ishiwaka Septetがこの日のために作ったオリジナル曲を演奏し、ゲスト全員をもう一度呼び込むと、メンバー全員で演奏されたのはOriginal Loveの名曲“接吻”。アイナ、堀込、PUNPEE、田島、大橋の豪華なマイクリレーが行
われ、最後にもう一度上原がピアノソロを聴かせて、大きな盛り上がりの中でイベントは終了。2時間半に及ぶ濃密な内容はまさに〈JAZZ NOT ONLY JAZZ〉を示すものであり、ジャズのさらなる可能性を、音楽の大きな喜びを強く感じる一夜だった。
SETLIST
The Shun Ishiwaka Septet
1. A Love Supreme
堀込泰行
1. エイリアンズ
2. New Day
3. Sunday in the park
田島貴男(Original Love)
1. Body and Soul
2. bless You!
3. グッディガール feat. PUNPEE
PUNPEE
1.Renaissance
The Shun Ishiwaka Septet
1. Naima
アイナ・ジ・エンド
1. スイカ
2. 私の真心
大橋トリオ
1. 鳥のように
2. マチルダ
3. EMERALD
上原ひろみ
1. XYZ
2. Return of Kung-Fu World Champion
アンコール
The Shun Ishiwaka Septet
1. 新曲(タイトル未定)
All Line Up
1. 接吻
INFORMATION
JAZZ NOT ONLY JAZZ
配信期間:2024年8月16日(金)19:00~2024年8月23日(金)23:59
配信チケット販売期間:2024年6月7日(金)16:00~2024年8月23日(金)20:00
Streaming+:3,500円(ステレオ配信)
https://eplus.jp/JAZZ_NOT_ONLY_JAZZ/st/
Live Extreme:4,500円(ハイレゾ・イマーシブ AURO 3D 配信) https://teket.jp/10343/35750
※必ず配信プラットフォームごとのガイドラインを読んだうえ、チケットをご購入ください。
※配信バージョンでは一部映像がカットになる場合がございます。
JAZZ NOT ONLY JAZZ スペシャルエディション
9月放送・配信予定
放送・配信終了後、WOWOWオンデマンドにて1カ月のアーカイブ配信あり
ステージの模様に加えて、出演者による貴重なインタビューなども収録
収録日:2024年6月21日
収録場所:東京・NHKホール
番組サイト:https://www.wowow.co.jp/music/jnoj/




