横浜で結成されたバンド、Ålborg(オールボー)。バンド名はデンマークの街から取られたそうだが、そこで1年間、留学して作曲を学んでいたみやが2022年に帰国。10代の頃からの音楽仲間と再会したことが、Ålborgの始まりだった。
「みんなが〈おかえり! また遊ぼう〉って声を掛けてくれてスタジオに入るようになったんです。それが楽しくて何度も遊んでいるうちに気が付いたらバンドになっていました(笑)」(みや)。
みや以外のメンバーは、くぬぎみなと、かまたたつや、やすだくるみ、いわかたろくろう。スタジオで一緒に音を出しているうちに曲が生まれていった。
「みやちゃんは〈新曲作ってきた〉とか言わずにいきなり歌いはじめるんです。こっちはそれを聴いて音を出してみる」(かまたたつや)。
「曲を聴いて最初に思い付いたフレーズを軸に考えていくんですけど、あまり派手にしないように、弾きすぎないようにしようと思っています」(くぬぎみなと)。
「トロンボーンを入れる場所は、みんなからもアイデアをもらってます。ここはコーラスよりトロンボーンがいいんじゃない?とか。でも、トロンボーンに限らず、曲全体をみんなで作り上げてますね」(やすだくるみ)。
メンバーは、みやの歌を邪魔しない、シンプルなアレンジを心掛けて曲を膨らませていく。それでいて、メンバーそれぞれの声が聴こえてくるようなミニマムだけど豊かなアンサンブルだ。そんな仲間たちをみやは「大信頼している」という。
「素っ裸な状態の曲を持っていくと、みんながそこで服を着せてくれるんです。そうじゃないと外を歩けない(笑)」(みや)。
取材にはいわかたを除く4人が参加したが、笑いが絶えない和やかな雰囲気で、彼らがバンドである以前に気心の知れた友達だということが伝わってきた。そんな彼らのファースト・アルバム『The Way I See You』が完成。レコーディングは、東京・梅ヶ丘にあるhmcstudioに加えて、かまたの自宅でも行われた。
「めっちゃ楽しかったです! トロンボーンをお風呂場で録音したり、疲れたら庭に椅子を出して陽射しを浴びたり。リラックスできたおかげで、柔らかい音が出せました」(やすだ)。
「かまちゃんの家で歌を録るのは最初から決めてたんです。家だったらパジャマで歌ってもいいし、録りたいときに録れる。楽しすぎて〈わあ~〉って歌ってたら、彼から〈もうちょっと丁寧に歌って〉と言われて〈は~い〉って(笑)。そういうことも言ってくれるのでかまちゃんの録音がいちばんです」(みや)。
ライヴハウスで長年、音響の仕事をやってきたかまたがサウンド面で貢献しているのもバンドの強みだ。「Ålborgの芯にあるのはフォーク・ミュージック」とくぬぎは言うが、よく聴くとギターが歪んでいたり、トロンボーンがジャジーなムードを醸し出していたりと、バンド・サウンドはさりげなくオルタナティヴ。そして、その真ん中にはみやの歌声がある。柔らかな声のなかにも芯を感じさせるのは、彼女の音楽のルーツにパンク・ロックがあるからかもしれない。
「小さい頃は家族の影響もあってパンクをよく聴いていたんですけど、次第にインディーを好んで聴くようになっていき、書く曲もフォークっぽくなってました。パンクはアティテュードとして自分のなかに残っていればいい、と思うようになったのかな。今回のアルバムにはそういう部分も入っているように思います。自分たちがやりたいことをいろいろと詰め込むことができたアルバムになっていて嬉しいです」(みや)。
みやは英語の歌詞で歌う理由を「いつかみんなで世界を回って歌いたいから」と答えてくれたが、アルバムはその第一歩。やすだがデザインしたアルバムのジャケットでは、世界に向けて船出したバンドを待ち受けるように海がキラキラと輝いている。
Ålborg
みや(ヴォーカル/ギター)、くぬぎみなと(ギター)、かまたたつや(ベース)、やすだくるみ(トロンボーン)、いわかたろくろう(ドラムス)から成る5人組バンド。2022年に横浜で結成され、同年の配信シングル“Girl”で注目を集める。その後、定期的に楽曲の発表を重ね、2023年にKAKUBARHYTHMから7インチ・シングル『Change / Memory』をリリース。〈フジロック〉への出演などを経て、このたびファースト・アルバム『The Way I See You』(KAKUBARHYTHM)をリリースしたばかり。