1994年の名盤、オーガナイズド・コンフュージョン『Stress: The Extinction Agenda』
――『Illmatic』から離れて、1994年のヒップホップシーンについてもお伺いさせてください。それこそ、ザ・ノトーリアス・B.I.G.の『Ready To Die』を筆頭に、ピート・ロック & C.L. スムースの『The Main Ingredient』、ジェルー・ザ・ダマジャの『The Sun Rises In The East』、ギャング・スターの『Hard To Earn』、スカーフェスの『The Diary』など、名盤がたくさん出ている年ですよね。ShotGunDandyさんが好きな作品はなんですか?
「難しい質問ですね……(笑)。豊作の年で名盤ばかりがリリースされているんですけど、自分はオーガナイズド・コンフュージョンが大好きなので、やっぱり『Stress: The Extinction Agenda』を選んでしまいますね。大好きなアルバムなんです」
――どういうところがお好きなんでしょうか?
「単純にかっこいいですよね(笑)。ビートが独特で、どす黒くて、すごく好みなんですけど、オーガナイズド・コンフュージョンもリリックがすごいんですよ。特に、ファロア・モンチのリリックがめちゃめちゃかっこいいですね。
あのアルバムには“Stray Bullet”、つまり“流れ弾”というタイトルの曲が入っているんですけど、流れ弾の目線で歌っているのがおもしろい。流れ弾が色々な場所に流れていく描写をしてるのですが、裏の意味として、彼のラップの能力が知らないうちにほかのMCを倒してしまっている、という内容でもあるんですよ。非力なMCを6歳の女の子にたとえるとか、流れ弾だから相手をねらわなくても倒せる、ねらっていない相手も倒しちゃうとか、そういうことをラップしているんですね。ファロア・モンチのリリックの真意に気づいた時に、すごいな!と思って。
ただ、当時は、あれくらいのリリックが書けないと、ラッパーとして尊敬されなかった。それが1994年という年でもあるなと思いますね」
――お話を聞いていて、ラッパーのスキルやレベルが一気に上がった年なのかなと思いました。
「いえ、それ以前からその傾向はありました。やっぱり、ラキムの存在が大きいですね。ただ、ラキムの登場から10年弱が経った時期なので、彼の影響を受けた優れたラッパーが一気に増えたのが1992~1994年頃でした。優れたリリックが書けないと〈ダサい〉と言われてしまいますし、そもそも当時は配信なんてないので、売れないんですよね」
――ナズ以外で優れたリリックを書けるラッパーといえば、どなたが思い浮かびますか?
「いっぱいいますよ。さっき述べたファロア・モンチもそうですけど、ウータン・クランのラッパーたちもそうですし。自分がいちばんすごいと思っているのは、MFドゥームです。彼のリリックは、もっとすごい。エミネムのリリックもいいですし、最近で言えばケンドリック・ラマーもすごいですよね。挙げていったら、きりがないんですけど」
――では、ShotGunDandyさん的に、ナズはベストでオンリーワンの〈GOAT(史上最高)〉なラッパーというわけではないんですね。
「ではないですね。もちろん、どこを評価するかによります。リリックのすごさなのか、ライミングのセンスなのか、伝えたいメッセージなのか――色々な要素があるので全部を考慮しないといけないんですけど、トップではないと思います。ただ、その候補の議論に入ってきてもおかしくはないです」
