1994年は、アメリカを中心にオルタナティブロックがメインストリームでも成功を収めるようになった時期だ。グランジムーブメントの最中、カート・コバーンが亡くなってしまったこの年、各国でパンクやエモ、オルタナティブメタルなどの名盤の数々が生まれている。そんな当時のアルバムを44作選んで紹介しよう。 *Mikiki編集部

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TORI AMOS 『Under The Pink』 Atlantic(1994)

1990年代といえば、女性シンガーソングライターによる自己表現が花開いた時代でもある。そんな流れを象徴するトーリ・エイモスは、クラシック由来の音楽性と繊細なボーカリゼーションが特徴で、フェミニズムなどを表現した歌詞も魅力的。前作に続いて成功を収めたこの2ndアルバムはエリック・ロスとの共同プロデュース作で、同時代的なオルタナティブロック調のサウンドも聴かせている。代表曲“Cornflake Girl”を収録。

 

BAD RELIGION 『Stranger Than Fiction』 Atlantic(1994)

日本でも人気が高いメロディックハードコアバンド、その代表作の一つである8thアルバム。メジャーデビューを果たし、商業的な成功を収めたとはいえ、変わらない青さと1970年代パンクの魂を純度高く受け継いだ歌や演奏が魅力的。グリーン・デイなどと並んで、ポップパンク再評価の今こそ改めて聴きたい。ヒットシングル“21st Century (Digital Boy)”は、キング・クリムゾン“21st Century Schizoid Man”へのオマージュであるとともに、加速する大量生産・大量消費社会化を皮肉ったもの。

 

BARK PSYCHOSIS 『Hex』 Circa(1994)

近年、再評価が進むポストロックの始祖的なイギリスのバンドによる1stアルバム。リリース後に解散、2004年に復活して2作目『///Codename: Dustsucker』を制作したものの、グラハム・サットンのソロプロジェクトと化したので、本作がバンドとしてほぼ唯一のアルバム。後期トーク・トークの美学に連なるジャズの影響が顕著な静謐な演奏や音響、アンビエンスを湛えた空間性は、ここでしか聴けないタイムレスな魅力を放っている。

 

BEASTIE BOYS 『Ill Communication』 Grand Royal/Capitol(1994)

言わずと知れた悪ガキトリオの4作目にして代表作の一つ。バンド回帰した前作『Check Your Head』での成果を活かしつつ、サンプリングを駆使したヒップホップもあり、NYハードコアもありと多彩なサウンドを聴かせる。“Sure Shot”“Get It Together”“Root Down”など名曲揃いだが、中でも“Sabotage”はスパイク・ジョーンズが監督したミュージックビデオ込みで画期的かつ記念碑的。