古風な万華鏡を振ったかのように、群舞し、跳びはね集い、拡散する響き。時を持たないメランコリックな微笑を呼び起こしてくれる音色。トイピアノの乱舞するようなアンサンブルが感じさせる豊かな色彩。トイピアノ版で“ゴルトベルク”を世に問い、その次が“音楽時計”とは! 鍵盤楽器への飽くなき深い洞察が固有の楽器1つ1つの〈個性〉を見出し束ね、〈音楽家〉として、また〈職人〉としての相貌を調和させ、音楽を真新しく創造させる。ブックレットに掲載された楽曲ごとのフォーメーションには、まるでオーケストラの楽器配置を思わせるような探究と実験のダイナミズムが息づいており、〈ケンバニスト〉塚谷の真骨頂を垣間見るようだ。
塚谷水無子『ハイドン:《音楽時計のための作品集》』〈ケンバニスト〉が鍵盤楽器への飽くなき深い洞察で奏でる豊かな色彩
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