シュニットガー・オルガンの個性と作品の演奏習慣に徹底してこだわったバッハ第2集

 2012、13年とゴルトベルク変奏曲をパイプ・オルガンとポジティフ・オルガンとで立て続けに録音し驚かせてくれた塚谷水無子。パイプ・オルガンの権威としてだけでなく、ピアノで同時代音楽を演奏したり、編曲から即興、本まで出版するなどマルチな才能を活かして活躍中だ。

 オルガニストとして有名ですが、一部で“ケンバニスト”ともされていますね。
 「パイプ・オルガンが第1の楽器ではあるのですが、前作でシルヴェストロフのピアノ作品集も出させていただいたり、時々ライヴでトイピアノを弾いたりとか、タルカスをやったりしていますので。そんな話をしていたらプロデューサーが、ケンバニストはと。じゃあそれでいいやって言ってしまったんですね。海外ではキーボーディストとしかいいようがありませんけど」

塚谷水無子 トッカータとフーガ~バッハオルガン作品集II キング(2017)

 バッハ作品集の第2弾がいよいよリリースされます。
 「CDでは11枚目になります。師であるジャック ・ファン・オートメルセンに捧げています」

 今回はフランツ・カスパー・シュニットガーの楽器をお使いになっているのもポイントですね。
 「アルクマールの街にあるこの楽器は、全世界のオルガニストにとっての憧れなんです。前作はハールレムのバフォ教会にある、モーツァルトが弾いたというクリスティアン・ミュラーの楽器でした。実はこのシュニットガー・オルガンと向かい合うのは15年ぶりになります。以前卒業演奏会で使い、今回収録した《トッカータとフーガ》もその時に弾いています」

 BWV542はセパレートして、幻想曲をアルバム冒頭に、フーガを最後に置いています。
 「もともとバッハは礼拝の始まる前に幻想曲だけ弾いて、お祈りの時間を挟み、それが終わったら大フーガで終わるというスタイルで演奏していました。そういう時間がCDの中に流れるといいなぁという思いで配置しました」

 アーティキュレイションにもかなりこだわっていますね。マルチェッロの冒頭でもひとつひとつの音符の扱いが異なっています。
 「マルチェッロの第1楽章は本当に難しいんですよ。多分オルガンのキャパシティのギリギリまで音符が入ってしまっている。テンポを遅くして弾くという方法もあったと思いますが、やはりイタリアのバロックですから、軽やかでないと」

 《ゴルトベルク》のアリアも収録されています。
 「《ゴルトベルク》のアリアは、アンナ・マクダレーナが書き写したマニュスクリプトに忠実にやっています。書き損じの音や、現行の原典版とは向きが違うトリルなど、この曲が好きな方はおやっと思うようなヴァージョンを入れています」

 


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