昭和から令和へ時代は移り変わったが、キン肉マンは常にそこにいた

言わずと知れた、日本を代表するモンスターコンテンツ「キン肉マン」。そのオリジンである、ゆでたまごによる漫画は1979年に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まっている。その後、1983年にアニメ化されるやいなや、キン消し(キン肉マン消しゴム)の大旋風も引き起こし、80年代キッズたちから熱狂的な支持を得た。

主人公キン肉マンと個性豊かな正義超人たち、これまた個性豊かすぎる悪役の残虐超人たちや悪魔超人たち――キャラクターの豊富さは、「キン肉マン」という作品の最大の魅力だ。また興奮と意外性に満ちた格闘技バトル、それらを見せるインパクトの大きすぎる画、物語におけるギャグ(笑えるコメディ要素)とシリアス(カッコよさやドラマティックな感動の要素)のバランス、ぶっ飛びすぎた設定や独自の言語感覚……と、「キン肉マン」が人々を魅了する理由をいまさら列挙する必要もないだろう。

昭和・平成・令和と時代はかなり移り変わったが、「キン肉マン」という作品は常に日本のカルチャーのなかで大きな存在感を放ってきた。40年以上にわたって愛されている同作は、新たなテレビアニメ「完璧超人始祖編」も2024年7月に放送がスタートしたばかり。直撃世代は上に書いたとおり80年代のキッズだろうが、平成生まれの私だって幼少期にはアニメの再放送を見て、おもちゃ屋で売っていたカセットを買って聴いていたし、中学校の同級生にはキン肉マン仲間がいて、連載中だった続編「キン肉マンII世」も読んでいたくらいだ。

世代を横断するだけでなく、ジャンルやカテゴリーにしてもそう。キン肉マンがカバーする領域は、漫画やアニメに留まらない。キン消しについても言及したように、グッズやイベント(現在、東京・池袋のサンシャインシティで原画展が開催中)など、キン肉マンというカルチャーの広がりは果てしなく、キン肉マンは文化だ、なんて言いたくなる。今で言うところのポップカルチャー全域に、キン肉マンの拡張と影響は及んでいるからだ。今回Mikikiが岸田繁(くるり)による特別寄稿を掲載しているように、キン肉マンファンはどの世界にもあまねく存在している。

 

80年代キッズが愛聴したレアなカセットが初CD化

そういった〈キン肉マンというカルチャーの広がり〉の一つには、言うまでもなく音楽も含まれている。キン肉マンといえば、まずはあの“キン肉マン Go Fight!”が脳内再生される、という方は多いのではないだろうか。

80年代は音楽の記録・再生媒体が多様化した時代なので、キン肉マンに関係する音楽作品はレコードでもCDでもリリースされてきたが、当時もっとも身近な存在だったのは手軽で安価で扱いやすいカセットだったはず。ウォークマンやデッキは、一家に一台ほぼ必ずあったことだろう(ちなみに、ウォークマン風のカセットプレーヤーをモチーフにしたステカセキングという超人もいる)。

そんな80年代キッズをキン肉マンの音楽沼へズブズブと引きずり込んだのが、1986年9月21日に発売された『キン肉マンのザ・ヒット・パレード 超人の歌ベスト20』だった。〈これこそが人生で初めて買った音楽作品!〉という強い思い入れがある方もいるだろう。

VARIOUS ARTISTS 『キン肉マンのザ・ヒット・パレード 超人の歌ベスト20』 コロムビア(2024)

当時、多くのキッズが愛聴したこの『キン肉マンのザ・ヒット・パレード 超人の歌ベスト20』だが、近年の昭和レトロブームも追い風になったのか、最近は希少なレアアイテムとして高値で取引されており、ネットオークションでは時に数万円の値がつくこともあったようだ。

そんな絶妙なタイミングで、そしてキン肉マンが日本中で再び大きなうねりになっている今、『キン肉マンのザ・ヒット・パレード 超人の歌ベスト20』が初めてCD化された。〈懐かしい!〉〈あの頃、テープが伸びるくらい聴いてたな~〉〈探していたあのカセットが!〉と、初報の時点で大きな話題になっていたことは記憶に新しい。

本作は、アニメ「キン肉マン」に関係する23もの楽曲の、おいしいところだけを詰め込んだアルバムになっている。“キン肉マン Go Fight!”“炎のキン肉マン”“キン肉マンボ”といった主役キン肉スグルにまつわる曲はもちろんのこと、テレビでおなじみだった“阿修羅地獄(アシュラマンのテーマ)”から“悲しみのベアー・クロー(ウォーズマンのテーマ)”“テキサスブロンコ(テリーマンのテーマ)”まで正義超人・悪魔超人たちのテーマソングも選出されている。