2024年7月28日、これまで未配信だったROSSO、LOSALIOS、THE GOLDEN WET FINGERSの作品がサブスク解禁された。突然の一報に音楽リスナーたちが驚愕したと同時に、各バンド/プロジェクトに再びスポットが当たることに多くのファンが歓喜した。

その中でもROSSOの存在は大きく、〈THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケと元BLANKEY JET CITYの照井利幸らが組んだバンド〉という情報以上に、各メンバーの個性が衝突して生まれた新たなロックの瞬間風速に、リスナーたちはひたすらぶっ飛ばされ続けたのである。

様々なバンド/プロジェクトに参加したチバにとって、ROSSOとはどんなバンドだったのか。ROSSO、ひいてはミッシェル以降のチバユウスケの動きについて、ライターの兵庫慎司に綴ってもらった。 *Mikiki編集部


 

チバユウスケ周辺の複雑な相関図

ROSSOとLOSALIOSとTHE GOLDEN WET FINGERSの、これまで配信されていなかった各作品が7月28日から各ストリーミングサービスで解禁された。ついては特集記事を組むので、ROSSOについて書いてください──。

という依頼をいただいたのだが、正直、けっこう困っている。好きじゃないとか興味がないとか、書きたくないということは、まったくないにもかかわらず。

というのはですね。チバユウスケは、パーマネントに活動したTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとThe Birthday以外にも、数多くのユニットに参加してきた人である。いや、〈参加してきた〉というより、〈自ら立ち上げてきた〉と言った方が、より正確か。自分じゃない人が中心のユニットに参加したのは、元BLANKEY JET CITYの照井利幸のソロプロジェクトだったRAVENくらいなので。

ちゃんと数えてみると、ROSSO、RAVEN、THE MIDWEST VIKINGS、Midnight Bankrobbers、Star Casino、SNAKE ON THE BEACH、THE GOLDEN WET FINGERSと、7つもある。

しかも、前述のとおりチバはRAVENにも参加している。ギタリストのイマイアキノブは、ROSSOにもMidnight BankrobbersにもTHE GOLDEN WET FINGERSにも参加しているし、The Birthdayの初代ギタリストでもある。

THE GOLDEN WET FINGERSは、チバのソロプロジェクトだったSNAKE ON THE BEACHから発展して作られた映画「赤い季節」に出てくる架空のバンドだが、のちに本格的に活動を始めて、アルバムを3作リリースし、ツアーも行っている。

元BLANKEY JET CITYの中村達也は、そのTHE GOLDEN WET FINGERSとRAVENに参加している。キュウちゃんことクハラカズユキは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとThe Birthdayのメンバーだが(覆面バンドだが)THE MIDWEST VIKINGSのドラマーでもあるし、確か、ROSSOのライブでも一回叩いたことがあった。

というように、それぞれのユニットのメンバーが重なっていたり、バンドとソロが、もしくはソロとバンドが連なっていたりして、〈はい、この時期からこの時期までのチバは、このメンバーでやったこのバンドにいて、こういう音楽性でした〉というふうに、わかりやすく切り分けて書くことが、とても難しいのである。というか、できないのである。

まあでも、そうも言っていられないので、以下、当時の自分の記憶や認識を頼りに、書けることを書いてみます。

 

ROSSOの結成とTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの解散

まず。それらのチバユウスケのワークスにおけるROSSOの特徴を素朴に挙げると、プロデビュー以降のキャリアにおいて、チバがTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT以外で初めて作ったバンドである、ということだ。ROSSOが結成されたのは、2001年11月に長いツアーを終えたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが活動休止に入った直後、2001年の末だった。

その少し前からチバは照井と親しくなり、彼のブランド〈ケルト&コブラ〉のショップに入り浸ったりしているうちに、一緒に音を出してみようか、ということになったそうだ。当時のインタビューでそんな話をしていた、と記憶している。自分が行ったインタビューではないが、上司のサポートで撮影・インタビューに同行して、チバがその話をしている場に自分もいたので、間違ってはいないと思う。

で、そのふたりで始動することを決め、チバと親しかったASSFORTのMASATOをドラムに迎えてファーストアルバム『BIRD』を制作、2002年4月24日にリリースする。

ROSSO 『BIRD』 TRIAD(2002)

同年5月から6月にかけて、中村達也のLOSALIOSとのジョイントツアー〈WEEKEND LOVERS〉で全国11ヶ所を回った。このツアーは、LOSALIOSとROSSO以外のゲストやDJは地方によって違ったため、自分はsyrup16gが出た郡山HIP SHOT JAPANでの公演をを観に行った記憶がある。

さらに、8月には〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉にも出演しているが、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが活動を再開するため、ROSSOはここでいったんストップ。そうだ、そのライジングだ、キュウちゃんがドラムを叩いたのは。

その後、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはレコード会社をコロムビア/TRIADからユニバーサルシグマに移籍。新体制の下、2003年3月にアルバム『SABRINA HEAVEN』、6月にミニアルバム『SABRINA NO HEAVEN』を連続リリースするが、8月31日に解散を発表。〈LAST HEAVEN TOUR〉のファイナル公演を10月11日に幕張メッセで行い活動を終えた。