多様化する現代のアイドルが映す人々の思い

サントリー食品インターナショナルのペットボトルコーヒー・クラフトボスとタワーレコードが、〈アイドル〉をテーマにコラボキャンペーンをスタートさせたことが話題になっている。

プレスリリースには、〈アイドルってすごい! いつも理想の姿を見せてくれるかと思えば、今までのイメージを裏切った意外な姿も見せてくれる。誰よりも期待と向き合い重圧を背負いながらも、時代の閉塞感なんて軽く吹き飛ばしてくれる、そんな存在〉とある。今回のキャンペーンには、クラフトボスが、そんなアイドルのように〈働く人にとっての日々の活力となる存在になっていきたい〉という思いが込められているという。

たしかに、アイドルはすごい。1970年代以降(ひょっとしてそれ以前から?)、アイドルがポップカルチャーの中で大きな位置を占めつづけている日本において、多くの人々にとって支えになってきたのがアイドルであることは間違いない。だからこそ無数の願いや思いなどが折り重なった重い責任を背負っており、それゆえに輝かしい……という奇跡的なバランスで成り立っているのがアイドルという存在だ。

そして今、アイドル像は大きく変化した。〈アイドルなんて〉と軽んじられる言説はほとんど聞かなくなり、リスペクトされ、ポジティブなパワーを与える存在として幅広く受容されるようになった。時代は昭和から平成、令和へと移り、アイドルの年齢やジェンダーは多様化している。それこそ、2019年に音楽活動へ復帰した元キャンディーズの伊藤蘭のようなベテランが活躍する一方で、今をときめくボーイズグループがしのぎを削り、ノンバイナリーやトランスジェンダーのアイドル、子育てをしながら活躍する藤咲凪(最終未来少女)やNegiccoのようなアイドル、実体を持たないバーチャルアイドルすらいて、規模の大小を問わず百花繚乱の様相を呈するシーンにおいて、旧来のステレオタイプなイメージは打ち壊された。だからこそアイドルは、現代の人々の思いをより強く、広く反映するようになっている。

(純粋なアイドルに限らず)誰もが誰かを推しており、その形も十人十色に多様化した今、アイドルが今回のキャンペーンのテーマに据えられたことは自然に思える。

 

河合優実が新人アイドルに扮するクラフトボスの新CM

キャンペーンに話を戻すと、まずクラフトボスの新しいテレビCMが評判を呼んでいる。

ハリウッド俳優トミー・リー・ジョーンズが宇宙人ジョーンズに扮する〈地球調査シリーズ〉は広く国民的に知られた長寿人気シリーズ。その新作〈宇宙人ジョーンズ・アイドル〉篇には、河合優実が新人アイドル〈ユウミ〉役で、役所広司が伝説のプロデューサー〈ヤクショ・K〉役で、神木隆之介がユウミの幼なじみ役で、そしてジョーンズが凄腕DJ役で出演中だ。

公開中の映画「ナミビアの砂漠」が非常に高い評価を得ており、その名前を聞かない日はないほど各所に引っ張りだこな河合が煌びやかなアイドルを演じる、というだけでキャスティングの勝利だろう。ステージで輝く河合が見られる貴重なCMだ。「救っちゃおっかな~、世界」とつぶやくくだりにもときめく。

さらに音楽好きとして知られる神木も、映画「PERFECT DAYS」でさらに国際的な評価を上げた役所も配役の豪華さを超えてハマっており、ユーモアと演技の見事さが短尺の映像に詰め込まれ、見応えしかないCMになっている。

 

タワレコで配布中の河合優実が歌うCD“なんてったってアイドル”

同CMで、熱狂的な大観衆を前にユウミが歌っているのは、小泉今日子が1985年に発表した大ヒット曲“なんてったってアイドル”のカバーだ。この組み合わせが絶妙で、アイドル文化を象徴するこの上ない伝説的な曲であることはもちろん、〈マルチすぎる俳優・河合優実は歌も歌えるのか〉と圧巻のパフォーマンスが話題を呼んでいる。

今回のクラフトボス × タワレコのキャンペーンでは、なんとその“なんてったってアイドル BOSS×idol ver.”を収録したオリジナルCDのプレゼントキャンペーンが開催中だ。CDのジャケットや歌詞カードには、CMのライブシーンで着用していた衣装でポーズを決めるユウミのビジュアルを使用するなど、新人アイドル・ユウミの世界を存分に楽しめる一枚に仕上がっているとのこと。今のところ一般販売されていない特別な盤なので、期間中にタワレコの実店舗でぜひ手に入れたい。

さらに店頭では、特別な施策も実施されている。全店に特設ブースが設置されており、各店の店員がアイドルへの愛や感謝、応援の気持ちを込めて作成したPOPが掲出中。掲げられているのは、〈いちばんのファンでいるという仕事がある。〉というメッセージ。アイドルを最前線で支え、応援しているタワレコとそこで働く店員、彼らから溢れ出る思いが結実した企画だ。店員も来訪客もそれぞれが推すアイドルは異なるだろうが、アイドルという存在に日々エネルギーをもらっている人はブースにぜひ足を運んでほしい。