©Akinori Ito

私にとってメランコリーとは〈優美な悲しみ〉

 国内外から注目を集めるフルートの新星。昨年は1stアルバムのリリースに加えて12月にはデビュー・リサイタルを成功させた。

 「紀尾井ホールで演奏する日をずっと夢見ていたので、最後に拍手をいただいた時には涙が出そうになって、ステージをぐるぐる回って必死に堪えました」

Cocomi 『Mélancolie』 ユニバーサル(2023)

 前作が豪華ゲスト陣との共演でも話題を集めた〈名曲集〉だったのに対し、今回の2ndアルバムは3人のフランス人作曲家にフォーカスし〈知られざる佳曲〉を中心にまとめた意欲作。リサイタルでリアル共演も果たした国際的ピアニスト、ニュウニュウの参加も嬉しい。

 「ニュウニュウさんとは初顔合わせしてすぐに、音楽の方向性から間のとり方まで何もかもがぴったり合うのを感じました。レコーディングの時にも凄く心強い言葉をかけてくださって、本当に彼がいたからこそ完成できました」

 耽美的なドビュッシーの“美しき夕暮れ”も絶品だが、プーランクの“消えた男”のタイトルでも知られる歌曲や、不世出のシャンソン歌手エディット・ピアフに捧げられたピアノ即興曲などの哀切が素晴らしい。

 「フランス歌曲が好きで、特にプーランクは傑作フルート・ソナタを書いた作曲家だからより熱心に勉強しています。クラシックは古典なイメージの人が多いけれど、あのピアフと同じ時代に書かれた音楽だと知れば、きっともっと興味を持ってもらえるはず」

 アルバム・タイトルもプーランクのピアノ曲から。

 「〈憂鬱〉と訳されるのが普通ですが、私の“メランコリー”のイメージは、この曲が持っているような〈優美な悲しみ〉です」

 教育者でもあったベル・エポックの大作曲家フォーレは4作品を収録。どれもフルートにとっての名曲ばかりだが、とりわけパリ音楽院の卒業試験のために書かれた“ファンタジー”は必聴だ。

 「印象の異なる2つの楽曲で構成されていて、後半には超絶技巧的な部分もありますが、私はむしろ前半で最初の音色をどう作るか、長いフレーズでしっかりと息をコントロールできるかどうかが、最大の課題でした」

 11月には本盤をもとにしたリサイタルの開催も決定。

 「紀尾井ホールの響きやお客さんとの親密な距離感が大好きなんです。どこか教会を思わせる雰囲気で……。いつかフランスの古い教会のような場所でも演奏してみたいです!」

 


LIVE INFORMATION
Cocomi リサイタル『Mélancolie』

2023年11月11日(土)東京・紀尾井ホール
開場/開演:18:30/19:00
予定曲目:美しき夕暮れ、アラベスク 第1番(クロード・ドビュッシー/編曲:萩森英明)/消えた男 FP134、エディット・ピアフを讃えて、メランコリー FP105(フランシス・プーランク/編曲:萩森英明) ほか
https://www.universal-music.co.jp/cocomi/