
自身で選んだ思い出の曲、心に残る映画音楽に、新たなアレンジで挑戦!
フルート奏者Cocomiの新作『Bouquet de Cinéma』は、フランス語のタイトルからもわかるように4作目にして初めてクラシックのフィールドから離れて、映画音楽に取り組んだ作品だ。
「前作でカプースチンとマルティヌーというクラシックのなかでもコアな作曲家にフォーカスしたので、今回は、誰もが一度は聴いたことがあるだろう曲を集めたアルバムにしたくて、映画音楽をテーマにしました」
確かに“ムーン・リバー”から始まって名曲揃いではあるけれど、意外性も潜んでいる。そのひとつが映画「ローズ」の主題歌だ。
「幼い頃から見てきた映画から印象に残っている曲を選んでいますが、例外なのが“ローズ”です。家で母がよく歌っていたものなので、私の子供時代を鮮明に思い出させてくれる曲です」
他の楽曲は、全て映画と結びついた選曲で、意外性でもうひとつ挙げると、「グレイテスト・ショーマン」も大ヒットした主題歌ではなく、感情を含めて全てのディテールを話せるほど大好きなシーンで歌われる“タイトロープ”を選んでいる。また、映画に視点を向けると、ジブリ映画「魔女の宅急便」があれば、1940年代の「カサブランカ」など古い映画もある。
そして、それらの名曲は萩森英明と福嶋頼秀が編曲。よく知る名曲に新鮮な響きをもたらしている。
「“この素晴らしき世界”ではイントロに鳥のさえずりが入っていたり、“虹の彼方に”も楽譜をいただいた時にあの曲だよね?と思うくらいのイントロがあって。福嶋先生の編曲は、作品全体を紹介するものになっているので、新鮮でおもしろいんですよね」
本編収録13曲中11曲は、ピアノとのデュオだが、“雨に唄えば”と“シンドラーのリストのテーマ曲”は、信頼する東亮汰を含むストリングスと共演している。
「“シンドラーのリストのテーマ曲”は、ヴァイオリンのイメージが強いので、カルテットの編成でヴァイオリンがメロディを弾くと思っていたら、フルートが吹く編曲になっていて……。ヴァイオリンのニュアンスを引き出しつつ、フルートとしてどのように演奏できるかが難しかったですね」
フルートの爽やかな音色に心地好さを感じるなか、聴くほどに繊細なニュアンスへのこだわり、曲が流れるシーンを知り尽くしているからこその深い感情表現、そして、それらを可能にする磨き続けているテクニックに耳を奪われていく。『Bouquet de Cinéma』は、フルートの魅力をより知るきっかけにもなる作品だと思う。
LIVE INFORMATION
Cocomi カルテット公演〈モーツァルト フルート四重奏曲全曲演奏会〉
2025年8月24日(日)埼玉・ふじみ野 ステラ・ウェストホール
開場/開演:13:15/14:00
https://f-bunka.jp/stella-east/event/r70824/
2025年9月14日(日)東京・町田市民ホール
開場/開演:18:15/19:00
https://www.m-shimin-hall.jp/event/m20250914/
■出演
Cocomi(フルート)/成田達樹(ヴァイオリン)/安達真理(ヴィオラ)/矢部優典(チェロ)