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パンデミックを乗り越えて、進化したバンド・アンサンブル。

 ニューヨークの、尖鋭的なラージ・アンサンブルの中核メンバーとして活躍する、ライアン・ケバリー(トロンボーン)。彼は、ブラジリアン・ミュージック、クラッシックとジャズの融合、オクテット、ビッグ・バンドと、リーダー・ユニットでも多彩な活動を誇っている。ケバリーのバンド・ロースターの中でも、フラッグシップ的な位置付けにあるのが、2012年に始動したユニット、〈カタルシス〉である。2014年にカミラ・メザ(ギター/ヴォーカル)が参加して以来、そのオリジナリティあふれるサウンドで、コンスタントにアルバムをリリースしてきた。コロナ・パンデミックによる中断から、5年のブランクを経て〈カタルシス〉は、さらに進化したアンサンブルでカムバックを果たした。

RYAN KEBERLE & CATHARSIS 『Music Is Connection』 Alternate Side(2024)

 「昨年、このメンバーが再結集して、リハーサルを開始した。パンデミックを経たこの5年間、メンバーそれぞれが、ニューヨーク・シティを離れたり、子供が生まれたりといった、人生のフェイズの変化が、それぞれの音楽を深化させていた。私たちは、タイトな音楽的コミュニケーションを取り戻し、新たなサウンドをクリエイトすることができた」と、ケバリーは、レコーディングを振り返った。本作では、ケバリーのオリジナルをメインにフィーチャーした過去の作品よりも、さらにそれぞれのメンバーのオリジナルやアイディアが盛り込まれ、よりコレクティヴな要素が強くなった。カミラ・メザのギターも、従来よりも大きくフィーチャーされ、エリック・ドーブ(ドラムス)も、サウンド・エフェクトでも才能を発揮し、ケバリーは、キーボード、ボーカルを多くプレイして、ハーモニーが分厚くなった。

 「音楽は、人との音楽的コミュニケーションを図るツールであるだけでなく、感情やメンタル面でも共演者や、リスナーとポジティヴにシェアできるものだと、この4年間で学んだ。その思いをアルバム・タイトルの『Music Is Connection』に、込めた」と、ケバリーは熱く語る。新生カタルシスが、華々しい再デビューを飾った。