Reverso ©PaulinePenicaud

コンテンポラリー・ジャズと、20世紀初頭のフレンチ・クラッシックの蜜月

 レヴェルソは、ニューヨークのコンテンポラリー・ジャズ・シーンで活躍するライアン・ケバリー(トロンボーン)が、パリで活躍するクラッシックのバックグラウンドを持つフランク・ヴェステ(ピアノ)、ヴァンサン・クルトワ(チェロ)と2017年に結成した室内楽ジャズ・トリオで、ガブリエル・フォーレ、モーリス・ラヴェルやフランス6人組ら、20世紀前半に活躍したフランスの先進的な作曲家たちを、現代ジャズの視点から再検証するユニットである。デビュー作で、ラヴェルに挑んだこのトリオは、4枚目のこのアルバムでは、その師にあたりフランス近代音楽に多大な影響を及ぼしたガブリエル・フォーレにオマージュを捧げている。

REVERSO 『Harmonic Alchemy』 Outnote(2022)

 フランス出身のヴェステとクルトワは、学生時代からフォーレの音楽とともに成長し、大きな影響を受けている。ケバリーは、クラッシックのオーケストラでフォーレの代表作“レクイエム”を演奏して以来、その音楽に魅せられ、ピアノで演奏してハーモニーの分析を試みてきた。その成果は、フォーレのレクイエムの中の“リベラ・メ”のメロディを引用した“Into Me You See”となる。

 「フォーレの音楽を探究し、自分の内面に取り入れた結果、そのハーモニーの動きをジャズのコード進行へと応用し、インプロヴィゼーションを行うことが可能になった。譜面の再現ではない、私なりのフォーレをプレイすることができる」と、ケバリーは語る。フォーレや、ラヴェルは、20世紀初頭のアーリー・ジャズにおける集団インプロヴィゼーションの影響も、大きく受けている。ケバリー、ヴェステ、クワトロの3人も、ある時はユニゾン、また対位法的なメロディ・ラインの動きや、フリーキーなインプロヴィゼーションなどを、コンテンポラリー・ジャズの手法で、同時進行のアドリブも聴かせてくれる。理路整然と構成されたメインのテーマと、このアドリブのパートのコントラストは、あたかもフォーレが指向した音楽を完成に近づけたとも言えよう。コンテンポラリー・ジャズと、20世紀初頭のフレンチ・クラッシックの蜜月が、芳醇な香りを醸している。