シティポップに続くリバイバルブームとして日本産のフュージョンが世界的に注目されているが、その熱い眼差しはレコードやCDのリイシューなどに向けられることが多い。1970年後半から1980年代前半にかけて隆盛した日本のフュージョンブームだが、当時の輝かしい作品群を現在の優れたマスタリング技術などを介して再び耳にする喜びは、確かに何ものにも代え難い体験だろう。

そんな高い注目度を誇るフュージョンミュージックを生で感じられる場が、2024年11月にビルボードライブにて設けられているのをご存知だろうか? 本稿ではPYRAMID、本田雅人BAND、NAOTO × 鳥山雄司による公演をピックアップし、見どころなどを紹介していく。

 

PYRAMID

まずは鳥山雄司と神保彰によるユニット、PYRAMIDが11月6日(水)にビルボードライブ東京に登場する(大阪公演はすでに終了)。ギターの鳥山、ドラムスの神保、キーボード/ピアノの和泉宏隆によって2003年に前進のO!kay Boysが結成され、その後PYRAMIDに改名。以降はそれぞれのソロワークもこなしながら現在にいたるまで、フュージョンの可能性を追求し続けている。

だが、2021年に和泉が急逝。しかし、2人はPYRAMIDの歩みを止めることはなかった。2022年にはクラウドファンディングを通じて制作したアルバム『PYRAMID 5』を発表。和泉の遺した音源を用いたエキゾチックなインスト曲“Reflection Green”をはじめ、スムースジャズ、AOR、ラテンなどのエッセンスを深く味わえる至高の一作だ。

それぞれのソロでの活動も充実させながら、2人は2023年より新たなコンテンツ〈PYRAMID CITY JAM〉をスタート。ファンと一緒に作っていく架空の音楽都市=PYRAMID CITYをコンセプトに、配信ライブなどを通してPYRAMIDの〈今〉を発信していくという同コンテンツは、現在までに計5回、YouTubeを介して行われている。ファンからのコメントを読み上げる自然体の2人を見られるだけでなく、誰もがPYRAMIDのパフォーマンスを特等席で体験できるので、ぜひライブ前にチェックしてもらいたい(個人的に和泉が手がけた“Tornado”で締めくくられるVol.3がオススメ)。

そんなPYRAMIDはさらなる進化を追い求め、2025年8月に発売予定の新作に向けて邁進中。その第1弾として神保が手がけた“Brand-New Summer”が今年8月に、そしてこの10月には鳥山作曲による新曲“Night Flight”が配信リリースされている。ボサノバとドラムンベースがシームレスに繋がる革新的なナンバー“Brand-New Summer”、ワウギターが奏でるクールなメロディとフュージョン全盛期を想起させるシンセサウンドが印象的な“Night Flight”。いずれも過去の栄光にとらわれず、豊かな未来を創造するために切磋琢磨するPYRAMIDの情熱を感じることができる。

今回のビルボードライブ公演は〈PYRAMID CITY JAM -Live Vol.2-〉と題し、昨年開催した初回に続いて〈PYRAMID CITY JAM〉の世界を観客と共に作り上げていくという。すでに終了済みの大阪公演のステージ写真など見るに、プレイヤーである鳥山と神保が一番ライブを楽しんでいるようだ。東京公演もきっと笑顔溢れるステージになるに違いない。