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筒美京平も認めた歌声は、より魅惑的な色彩を帯びて

衣装チェンジが済み、往年の人気番組「Sound Inn S」や「今夜は最高!」の世界を彷彿とさせるラウンジーなコーナーへ。ここでは、コーラスを務めるAMAZONSのハーモニーも麗しいSAYURI(石川さゆり)の“ウイスキーが、お好きでしょ”、西田佐知子の“くれないホテル”といった、いわゆる大人の歌謡曲がカバーされたが、改めて彼女の歌声に差す独特な〈翳り〉に惚れ惚れさせられた。

筒美京平が語ったとされる〈ちょっと甘えっぽく、少年的でもある〉彼女の歌声は、齢を重ねてより魅惑的な色彩を帯び、さらにユニークな響きを獲得していると思わずにはいられなかった。なおこのコーナーでは、自宅から持参したというグラスを掲げて客席と乾杯をし(グラスの中身はほうじ茶とのこと)、台湾から来たというお客さんとのやりとりなども行われた。

しっとりムードはその後も続き、“信じかたを教えて”にはじまる林哲司が手がけた〈恋愛三部作〉のメドレーへと進む。けっして薄れることのないこの〈品格〉はどうだろう。伊代ちゃんのいつまでも変わらない可憐さとしなやかさにしみじみ酔いしれていると、目の前で大きなハレーションが起きたかのような強力すぎる“TVの国からキラキラ”が登場してきて、ワオ!と唸らされる。

続いて繰り出されたハードなアップチューン“Last Kissは頬にして”といい、この日の彼女はまさに縦横無尽。アイドル力を全開にして、オーディエンスをドキドキ&フワフワな気分で満たしていく。

そしてクライマックス。指切りポーズを駆使しながら、熊谷幸子作曲による“Mariage~幸せになって”、そして尾崎亜美が提供した“時に愛は”という問答無用の名曲を披露して本編は終了した。

 

“センチメンタル・ジャーニー”で放たれたタイムレスな輝き

思えばこの日、会場のそこかしこから、あの頃とぜんぜん変わらない、という驚きに似た感想が漏れ聞こえていたけれど、歌声の〈強さ〉という部分に関してはずいぶん進化している気さえする。トレードマークである個性的なアルトボイスも以前にも増して太さが感じられるし、安定感もバツグン。そこに桁違いの可愛らしさが加味されてとてつもない無敵感が生まれているのが、当時と現在の伊代ちゃんの大きな違いだろう。

アンコールでは、彼女が敬愛する大滝詠一作の“夢で逢えたら”のカバー、そして彼女にしか歌えない稀代の名曲“センチメンタル・ジャーニー”が披露された。とりわけアップテンポのイントロから鮮やかに華やいでいた後者は、タイムレスな輝きを放ち、身体中が無性に熱くなる感覚をおぼえたのであった。今年、NewJeansのハニが松田聖子“青い珊瑚礁”をカバーして話題となったが、それに続いて取り上げるべき曲があるとすれば間違いなくこれだろう、と真剣に思った次第だ。

2025年はいよいよ還暦を迎え(!)、そして2026年にはデビュー45周年イヤーを迎えるなど、今後もアニバーサリーなトピックが続く伊代ちゃん周辺だが、彼女のモチベーションはすこぶる高い状態にあるみたいだし、こちらも楽しい未来をしっかりと共有したいと思う。

 


SETLIST
松本伊代 Live 2024 “Journey” Tokyo Lover
2024年10月12日(土)東京・大手町三井ホール
1. Private fileは開けたままで・・・
2. ビリーヴ
3. メドレー:チャイニーズ・キッス~太陽がいっぱい~Kiss In The Dream~抱きしめたい
4. 有給休暇
5. バージニア・ラプソディ
6. Too Late Too Young
7. ウイスキーが、お好きでしょ
8. くれないホテル
9. メドレー:信じかたを教えて~サヨナラは私のために~思い出をきれいにしないで
10. TVの国からキラキラ
11. Last Kissは頬にして
12. Mariage~幸せになって
13. 時に愛は

ENCORE
14. 夢で逢えたら
15. センチメンタル・ジャーニー