今年でデビュー35周年を迎えたシンガーソングライター、高野寛。新作『Modern Vintage Future』はエレクトロニックなサウンドを全面的に導入して新境地を切り開いた。

そんな高野とかつて一緒に音楽活動をしていたのが、女優/歌手の原田知世だ。高橋幸宏が結成したバンド、pupaに高野と原田は参加。近年では、原田は新作『カリン』と前作『fruitful days』で高野に歌詞を依頼。原田のデビュー40周年記念コンサートで共演するなど交流は現在も続いている。長年の創作パートナー、伊藤ゴローがプロデュースを手掛けた『カリン』は冬をテーマにしたミニアルバムで、円熟味を増しながらも瑞々しさを失わない原田の歌声は唯一無二だ。

それぞれ独自のスタイルを持ちながら「世界観に通じ合うものがある」と語る2人に、新作を中心に語り合ってもらった。


 

pupaは私にとって生涯で唯一のバンド。宝物です(原田)

――お2人が出会ったのはいつ頃ですか?

高野寛「(鈴木)慶一さんが知世ちゃんのアルバムのプロデュースをしていた頃(90年代前半)に、パワーステーションでやったイベントで一緒になったのが初めてじゃないかな」

原田知世「そうです。その頃、よくパワーステーションでライブをやっていました」

高野「知世ちゃんはパブリックイメージとプライベートが変わらないというか、思っていたとおりの人でした。それは今も変わらないけど」

原田「高野さんも初めてお会いした時から全然変わりませんよ。ずっと高野さんは高野さん(笑)」

高野「でも、知世ちゃんはトーレ・ヨハンソンがプロデュースしたアルバム『I could be free』(97年)で、新しいタイプのポップスシンガーになったでしょ? すごくアーティスティックな人だなって思った。その後、『サヨナラCOLOR』(2005年)という映画のサントラを再現するというライブがあって、そこで知世ちゃんと共演したんだよね」

――『サヨナラCOLOR』は原田さんがヒロイン役で出演されて、高野さんをはじめ、忌野清志郎、永積タカシ、スチャダラパーなど多彩なミュージシャンがサントラに参加していましたね。

原田「みなさん映画に出演もされていたので、サントラのレコーディングに遊びに行ったりしました」

――そして、その後、高野さんと原田さんは高橋幸宏さんが結成したバンド、pupaに参加されます。お2人にとってpupaはどういう場所でした?

高野「なんだろう、大人の放課後のクラブ活動? 大人に放課後はないか(笑)。でも、大人のバンドだったよね?」

原田「ほんと、そうですね」

高野「幸宏さんがメンバーのことを本当に暖かく見守ってくれて。僕らは好き勝手にやってるけど、幸宏さんのちょっとしたアドバイスでビシッと一本筋が入る。だからリラックスしているけど良い緊張感があったんです。みんなそれぞれソロで活動しつつ、ここでしかできないことをやろうっていう遊び心もあって。知世ちゃんもギターを弾いたりしてたよね」

原田「フェスでね(笑)。大丈夫かな?って思いながら演奏したんですけど、すごく楽しかったです。pupaは私にとって生涯で唯一のバンド。だからすごく貴重な場所だし、宝物です」