来日直前! 『Piano Man』50周年! ビリー・ジョエルのライヴ・ベストが登場!
出世作となったアルバム『Piano Man』(73年)のリリースから50周年を迎えたことを記念し、11月2日が〈ビリー・ジョエル「ピアノ・マン」の日〉に認定されたという。日本とビリーの深い繋がりを明らかにするこのニュースを知って思わず笑みがこぼれた人も多いと思われるが、そもそもこの2023年は名盤『52nd Street』(78年)の登場からちょうど45周年であり、大ヒット作『An Innocent Man』(83年)においても40周年となる。〈実はお祝いネタに事欠かさない1年なのだよ〉と言葉を付け加えることをファンは忘れないだろう。すべては2024年1月に控えている16年ぶり10回目の来日公演をベストな状態で迎えるための大事なウォーミングアップ。ビリーとの嬉しい再会に向けて調子を整えておくためにはちゃんと景気を付けておく必要があるわけで、各自が改めて過去の音源と向き合う日々を送っているのではないかと思うのだが、どうだろうか?
そんななか、今回の来日を記念した日本独自企画盤『Live Through The Years: Japan Edition-』のリリースが決まった。85年のオリコン洋楽チャートで13週連続1位を記録したベスト盤になぞらえて〈ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!〉という邦題が付けられた本作。元になっているのは、2019年に配信でリリースされたコンピで、同作は77年から2006年までさまざまな年代のライヴ音源を網羅、映像作品のみで発表されていた音源なども交えていたことからリスナーたちに重宝されたものだった。本盤は初のフィジカル化というだけでなく、曲数が大幅に増量されているところがミソ。追加曲には世界初CD化となるものも多く、有名なプロモ・オンリー・アルバム『Souvenir』(77年)に収められていたコネチカット大学パーマー・オーディトリアムでの4曲、名ライヴ映像作品のオーディオ版となる『Billy Joel: Live From Long Island』(先ごろリリースされた『The Vinyl Collection Vol.2』にて初音盤化)からの音源などが特に喜ばれそう。また、コロムビアと契約するきっかけとなった72年のシグマ・サウンド・ライヴから“Captain Jack”や、2008年にオーストラリアのみでシングル化された“Christmas In Fallujah”なども選ばれていて、増量化によってフォローされる年代の幅もさらに広がった。
思えばビリーが新しい曲を作らなくなり、ポピュラー音楽シーンの第一線から退いて、すでに3つのディケイドを跨いだことになる。その間に彼の音楽との出会いを果たしたリスナーにとってはビリーが舞台上でパフォーマンスに没頭する様子は当たり前の光景となっているかもしれないが、引退を仄めかすようなこともあったなかで、彼が今日もライヴ・パフォーマーとして命を燃やし続けているこの状況には驚異を覚える部分もあって。音楽を吐き出そうとする熱量が、どうしてこんなにも変わらずにいられるのだろうか? 時折ネット上に流れてくる最新ライヴの様子を目の当たりにしながら驚きに近い喜びを感じることがしばしばあるけれど、今回の2枚組を聴いている途中、何度となく似たような感覚がよぎることがあり、〈ビリーがやってくる!〉という気持ちが、やにわに加速したということを記しておきたい。