Page 2 / 9 1ページ目から読む

「きかんしゃトーマス」とディストピア

――収録曲のことも聞かせてください。1曲目は“繋がれた脳と線路という名の檻と赤”。一見ヴィジュアル系風の言葉遣いだけれど、タイトルの〈線路〉、〈赤〉、あるいは歌詞の〈人面シュポポ〉などから「きかんしゃトーマス」のことを歌っているとわかります。

tink「以前Twitter(現X)に投稿したネタですね」

dagaki「あのネタ大好きだよね〜。長ったらしいタイトルもさ、ヴィジュアル系の伝統っぽくていいよね。意味深な感じがね」

tink「それもやりたかったことのひとつです」

――サウンド面でもヴィジュアル系の様式美が詰め込まれています。

tink「リファレンスの大元はフィオーレだよね」

tacato.「なかでも“君が望む永遠と僕が欲しかった唯一の倖せ”がリファレンスです」

――フィオーレは、2000年代中盤に活動していたインディーズバンドです。お好きだったんですか?

tink「去年、umbrellaとツーマンをやったときに、ベースの春さんに(フィオーレのことを)教えてもらったんですけど、すごくかっこいいなと。ああいうネオ(ヴィジュアル系)っぽい速い曲が好きで、フィオーレや初期ガゼット(the GazettE)のような曲を作りたかった。

色んな要素が詰まってますね。イントロはcali≠gariの“暗中浪漫”のリズムだったりするし、Bメロはアレンジを進めていく中で涼平さんがいた頃の彩冷えるっぽさが加わっていきました」

tink「で、編曲はテケトク(tacato.)に丸投げしました」

tacato.「かなり悩みましたね。とくにギターは」

――間奏のセリフを経たあとのギターソロなんて、いかにもヴィジュアル系!といったカッコよさです。

tacato.「ああいうのが好きなんですよね。ヴィドールの“人魚”みたいな、違うフレーズが混ざってひとつのフレーズになっていくようなものが。前作(『少し大きい声』収録“蜜”など)でもそれに近いことはしていたので、その延長線ともいえます」

tink「あとは、キメを意識しました。ジャラッジャーン!みたいな」

kikato「シンコペーションもすごい入ってるし」

tink「ベースのスラップが前に出てきて〈ヴォイ! ヴォイ!〉みたいなのもやってみたくて」

――セリフもヴィジュアル系っぽい独白ですが、よく聞くと〈ねえハロルド〉と呼びかけていますし、世界観に一貫性がある。

tink「セリフはレコーディング当日だったか、直前に思いついて入れることにしたんですよ」

――ハロルドはヘリコプターだから〈君のように飛べたら〉と。

tink「でもですね、ハロルドだって燃料がなくなったら飛べないし、本当の自由ではないんですよ。結局ディストピアなんです」

――自由とは……?という。

tink「『TRUMP』シリーズが好きなんですけど、この曲を作った時期に新しい舞台(『マリオネットホテル』)を観たばかりでそういうセリフになっちゃってるのかも」

dagaki「それはさすがに怒られるんじゃない?」

――永遠に続く箱庭的な閉塞感は、「TRUMP」シリーズと通じるものがあるかもしれ……ません。