ポップでありながら掴みどころのないサウンドがじわじわと人気を博している三回転とひとひねりが、新作『メルヘン巻』を完成させた。この1年、以前よりも積極的にライヴを行ってきた彼らは、バンド活動への手応えを感じているようだ。
「前作のジャケット・イラストを描いたことがきっかけで参加させていただいた〈MUSIC ILLUSTRATION AWARDS 2014〉の展示会で、会う人会う人が三回転とひとひねりの名前を知ってて、とても背筋が伸びる思いをしました。自分たちのやってること、楽しいことを真剣に考えることへの自信が、マイナスからやっとプラマイゼロになったかな」(みさき)。
「〈ササクレフェス〉がターニングポイントだったと思います。お客さんがぎっしり集まった雰囲気とか音の回り方とか、全部楽しかった。それを再現したいという気持ちで、ライヴも月1ペースで続けてこられました」(しげる)。
一人前の〈ササクレてる〉アーティストになりつつある彼ら。今作ではバンド感がグッと増していて、ロック的なアプローチを楽しんでもいる。
「ロックな曲を避けてた部分はあったんですよ。でも、音を重ねていくうちにみんな楽しくなって」(よしだ)。
「結成当初から考えると、ビックリするほどキャッチーになりました!」(じゅりあ)。
「“魔法少女”のメロディーはアニメのオープニング・テーマのような爽快感のあるイメージで考えたので、バンド感は意識して作れたと思いますね」(みさき)。
そうした個性的な楽曲を象徴するアルバムのタイトル/ジャケットにも注目だ。
「〈メルヘン〉は〈空想と現実が一体となったお話〉という意味もあることを知って、今回はそういうアルバムになってるなと思ったので……〈巻〉は、〈カステラ巻〉という長崎土産もあるし、巻くことや回転にこだわってるバンドなので(笑)」(じゅりあ)。
「ジャケは、大人になっても子供の頃の気持ちが忘れられない、妄想が髪に絡まりついて放したくても放せない少女をテーマに描きました」(みさき)。
中盤の“廃校が不服”“B面”では、前半とは打って変わって壮大なバンド・アンサンブルや朗読などが駆使され、このバンドらしい一筋縄ではいかない魅力を感じさせてくれる。曲が出来たエピソードも、やはり謎めいていて興味深い。
「〈廃校〉はしげるが〈朗読の曲にしたい〉って言って、とんちピクルス(福岡在住の松浦浩司によるソロ・ユニット)の動画を見せてくれたのを覚えてます」(じゅりあ)。
「ラストの全員でのフィードバック・ノイズは新たな試みですね」(よしだ)。
「〈みさきの声が冷たい〉って言われるので、怪談っぽい雰囲気になるよう歌詞を調整しました。“B面”はミスドでドーナツ食べてるときに隣の席でそういう会話をしてる2人組がいて、その淡々としたやり取りがすごくドラマティックで、いつかバンドで再現してやろうと」(しげる)。
また、TORIENAとKASHIWA Daisukeによる既発曲のリミックスもメンバー驚嘆の素晴らしい仕上がりなので、ぜひチェックしてみてほしい。「ファンタジーからだんだんと現実に向かっていく感じ」(よしだ)で展開していく『メルヘン巻』は、「前作は自分たちだけの世界だったのが、まだ無理してるけど、周りと打ち解けてきたし、友達も出来たという雰囲気」(じゅりあ)とのこと。まだまだ成長途中の三回転とひとひねり、今後にも期待したい。
三回転とひとひねり
みさき(ヴォーカル)、じゅりあ(ベース)、よしだ(ギター)、しげる(ドラムス)から成る、地元の長崎を拠点とする4人組。2008年に結成。デモ音源の制作を続けるなか、2010年にはソニー主催の音楽コンテスト〈音たま〉の長崎大会で準グランプリを受賞。2012年には術ノ穴のレーベル・コンピ『HELLO!!! VOL.4』に“仮設5号機”を提供し、2013年には同曲のMVが術ノ穴のYouTubeチャンネルで公開される。同年に初の全国流通盤となるミニ・アルバム『回覧盤』をリリース。その後は〈ササクレフェスティバル〉への出演をはじめ、ライヴ活動にも注力することで徐々に知名度を上げる。このたびニュー・ミニ・アルバム『メルヘン巻』(術ノ穴)をリリースしたばかり。